

城下町に下って、まずは尾山神社へ。和漢洋の三様式が混用された不思議な姿をした神門をくぐった境内には、古式に則った拝殿、本殿が鎮座する。加賀百万石の守り神にふさわしいお社だ。
香林坊の繁華街を抜けた長町界隈は、武家屋敷の面影を色濃く残す街並み。土塀に積もる雪が、雲の合間から時折、顔を覗かせる冬の陽の光に輝いて、年の瀬にふさわしい清々しさを醸し出す。
しゃれたカフェや土産屋さんが、目立たぬように街並みの中に溶け込んでいる。僕が気になったのは、やっぱり漆器。手にとってぐい呑みを掌(てのひら)で転がしているウチに衝動買いしてしまった。
大きく丸が描かれた大ぶりのぐい呑みは、冷酒をたんと飲みたい時にはもってこい。漆器の内側が錫加工されたタンブラーは、冷えたビールでも温かいお湯割りでもいけそうだ。
体重増に驚愕、今年の目標は減量!
でも、一番の収穫は「GARMIN」(ガーミン)のランナーズ・ウォッチ。約10年使ってベルトが切れてしまったマラソン・ランナー用の時計は、なかなか都内で見つからなかった。偶然、見つけた金沢のランナーズショップで新型機種に出会うのも何かの縁と、購入を即決した。
目当ての品を手に入れてご満悦の僕を見て、娘の舞子は真顔で言う。
「本当に最近、お腹が出てきてるよ、このままじゃ死んじゃうよ」
彼女は時にふてぶてしい態度とは裏腹に、意外と小心者なのだ。どうやら本気で僕の体を心配しているようだ。
元旦の夜、僕は一年ぶりに体重計に載っかった。ゲロゲロ、やばい。
今年の目標は、減量ということか。僕は早速、翌日から新GARMINを腕に巻いて街へ走り出る。
それもただ走るだけでは芸がない。有酸素運動プラス筋トレであってこそ減量に効果があると、この前、誰かに頂いた本に書いてあった。筋肉量が増えれば基礎代謝が増す。基礎代謝が増せば同じ摂取カロリーでもやせるはず。

走り出す前に、まずはスクワット。頭の後ろに手を組んで背筋を伸ばして足を屈伸する。久しぶりにやってみると、体を上下させる度に、太もものどこかがギュッギュッと奇妙な音を上げる。それでも50回を2セット。太ももやふくらはぎにしっかり痛みが伝わってから街へ出る。
街は寒いし、足は痛いし、昨夜の酒は残っているし。2019年の僕は大丈夫なのだろうか。
俳優・気象予報士
