日経グッデイ

草野仁の「苔(コケ)ない男」

根強く残る「草野仁カツラ説」の真偽

第10回  目、歯、頭髪に関する衝撃(?)の事実をお話しします

 草野 仁

クイズ番組や健康バラエティー番組の司会を中心に、今も第一線で活躍するキャスターの草野仁さん。70代を迎えてますます輝きを増す秘密はどこに隠されているのだろうか。いつまでも“苔(コケ)ない男”であり続ける、草野流のスーパーエイジング術。今回はQOL(クオリティ・オブ・ライフ)と大きく関係する「目」と「歯」、そして、ネットなどで根強く残る「草野仁カツラ説」の真偽について語っていただく。

丈夫な体の中で唯一の弱点は“目”

 幸い、私は生まれつき頑丈な体に恵まれたのですが、そんな中で唯一の弱点といってよいのが目です。

 初めて目の異常を感じたのが、NHKの大阪放送局時代、32歳のときのことです。目が異様に乾くのが気になりました。さらに、眼球の動きにともなって視野を黒い虫のようなものが動く、いわゆる飛蚊症(ひぶんしょう)のような症状に気づきました。

70歳を過ぎた今も、老眼鏡は使わない。
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 眼科医に行くと、「眼圧が高い」という診断を受けました。正常の状態ならば、眼球の内部を満たしている房水という液体の生産量と流出量のバランスがとれているため、眼球内の圧力は一定です。ところが、何かの原因で生産量のほうが多くなると、圧力が高くなってしまうのです。

 眼圧が高いまま放置しておくと緑内障の原因となり、失明の恐れがあるそうです。そうなっては大変なので、東京の大学病院の先生をご紹介いただき、眼圧を下げる手術をしてもらい、その後も点眼薬を使いながら70代まで無事に過ごしてきました。

 しかし、その手術から40年後、驚きの事実が発覚したのです。

白内障の手術を受けて明らかになった衝撃の事実

 きっかけは、70歳になって受けた白内障の手術でした。ご存じのように、白内障は目の水晶体が濁る病気です。加齢が大きな原因となって起きるとされ、緑内障と違い、ほとんどの人が避けられない症状だといわれています。

 徐々にものが見えにくくなっていましたし、車のヘッドライトや家の照明をまぶしく感じるという典型的な白内障の自覚症状があったので、眼科医として世界的にも名高い先生の診察を受けることにしました。

 白内障の手術は、現在では日帰りもできるようになり、とても簡単に受けられるようになりました。でも、視覚という重要な感覚を司る器官ですから、万に一つも間違いがあっては困ります。しかも、私の目の瞳孔は一般の人よりも小さいようで、同じ白内障の手術を受けるとしても決して簡単ではないということはある医師から聞いていました。そこで、その先生にお願いしたわけです。

 手術は無事に終わりましたが、手術後に先生から驚くべきことを聞かされたのです。

 「40年前に両目の眼圧を下げる手術をしたとおっしゃっていましたが、右目は手術した跡がありませんでしたよ」

 「えっ?」

 しばらくしてようやく事情が飲み込めました。40年前に手術をした先生は、左目を手術しただけで終えてしまったのです。

 これにはビックリ。当時の執刀医は、今も忘れない、某大学付属病院の助教授でした。そんな大病院でも、40年前にはこういうことがあったんですね。

「ずいぶん暗い世界に生きているんだねえ」

 私は、この一連の出来事で、大きな教訓を得ました。それは、「何でもそうですが、とりわけ目は、優れた先生に診てもらうべき」ということです。

 白内障の手術をしてくれた先生は、こうおっしゃっていました。

 「眼科手術は、患者さんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を大きく左右するきわめて大切な手術です。ですから、アメリカでは医学部の上位の学生でないと学べません」

 内科、外科が中心にある日本の医学部とは眼科の位置づけがずいぶん違うようです。先生によれば、高齢社会となって目に疾患を持つ人が増えた今、高齢者のQOLに直結する眼科の重要性は、もっと見直されてもいいのではないか、とのことでした。

 こうして、白内障の手術を受けたことで、驚くほど世の中が明るくはっきり見えるようになりました。診療時に、「ずいぶん暗い世界に生きているんだねえ」とおっしゃった先生の言葉を、しみじみと実感したものです。徐々に目が衰えていったことで、明暗の変化に気づかなかったのでしょう。

生まれてこのかた虫歯の痛みは未経験

 目と同様に、歯の働きも高齢者のQOLに大きく関係しています。食べ物をしっかり噛んで食べることは人間の本能的な行為ですから、歯が衰えてうまく噛めなくなれば、老化が進む原因になることは不思議ではありません。

 事実、自分の歯にせよ入れ歯にせよ、きちんと噛んで食べられる人は認知症の進行が遅いという研究もあるほどです。

 私はといえば、歯は生まれつき丈夫です。みなさんには驚かれるのですが、これまで虫歯になったことがありません。親知らずを抜いたことはありますが、虫歯の痛みというのを経験したことがないのです。

歯も生まれつき丈夫だが、“ゴシゴシ磨き”のせいで歯科医のお世話になったことはある。
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 誰かが書いた文章に、「虫歯の痛みを知らないような人間は、人間として未熟だ」と断じた一節がありましたが、それでいくと私などは古希を過ぎてなお未熟な人間なのかもしれませんね。

 ただ、人さまの前に出る仕事ですから、歯をきれいに保つ必要はあります。そのために、知り合いの歯科医のところで3カ月に1回、ホワイトニングを受けています。

 一般の方も、虫歯や歯周病の進行を防ぐために、かかりつけの歯科医をつくり、痛みがなくても定期的に診察してもらうことをお薦めします。

筋トレで鍛えた腕で歯を磨いていたら……

 中高年にとって、虫歯はもちろん、歯周病はとくにQOLに直結する大きな問題です。歯周病菌が持つ毒素は全身に影響して、さまざまな病気、特に心筋梗塞の原因の一つになるということがわかってきました。まさに、歯の不具合は体の一部分だけの問題ではなく、体全体にかかわることなのです。そう考えると、さきほどの眼科医と同様、歯科医についてもまた優れた先生に診てもらうべきだと実感します。

 さて、ここまでの人生で虫歯知らずの私でしたが、しばらく前に「水が歯にしみる」という人生初の体験をしてしまいました。いよいよ虫歯かなと覚悟して歯科医に相談すると、こう言われてしまいました。

「草野さん、いったいどんな磨き方をしているんですか?」

 どうやら、筋トレで鍛えた腕でゴシゴシと力を入れて磨いたのがよくなかったようです。歯の表面のエナメル質が傷ついて、知覚過敏になってしまったのです。幸い、このときは簡単な治療で痛みを抑えることができました。

 同時に、正しい磨き方を教えていただき、それ以後は不都合なく過ごしています。歯を磨くのは朝晩の1日2回。ただ、仕事が忙しくて寝る前の歯磨きをサボってしまうことがときどきあって反省しています。

根強く残る「草野仁カツラ説」の真偽は

 目、歯…、と来たので、毛髪の話もしておきましょう。以前、「草野仁カツラ説」という噂がネット上で広まったことがあります。カツラでないことは、ある番組のなかで元TBSアナウンサーの小島慶子さんが私の髪をグイと引っ張り、テレビカメラの前で証明してくれました。

 それでも、いまだにネット情報で「カツラ説」が根強く残っているのは、70歳にしてはふさふさなのが不自然に見えるからでしょう。光栄といえば光栄なことです。

頭髪は長年、同じヘアメイクさんに担当してもらっている。
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 もっとも、ふさふさして見えるのは、少なくなった髪をヘアメイクさんが上手にまとめてくださっているからです。ただ、そのパターンがいつも同じなのと、軽く染めてもらっていることでカツラだと思われるのかもしれません。

 この年まで髪を残すことができた理由は、髪を清潔に保ったからではないかと思います。毎日1回は必ず頭を洗っています。洗いすぎはかえってよくないという人もいますが、私の場合、仕事がら頭髪を整髪料で固めていますので、それをこまめに落としたほうがいいと考えているからです。

スキンヘッドの司会者が、テレビから「ふしぎ発見!」?

 そもそも私の髪の毛は、髪質が柔らかくて細い、いわゆる猫っ毛です。高校時代にリーゼントに挑戦したものの断念したつらい思い出は、このコラムの第8回「中高年のための草野仁流ファッション考」で告白したとおりです。そんな髪質ですから、若いときから「将来ヤバいぞ」と周囲に言われていましたし、私もそうかなと思っていました。

 特に 、私が大阪放送局にいた30代のころ、先輩の男性アナが、座っていた私の頭をまじまじと上から眺めて、「草野さん、ヤバいよ。これは薄くなるぞ!」と叫んだのは記憶に残っています。

 当時の私が考えていたのは、40歳になる前に毛髪が乏しくなったらカツラをかぶろうということでした。カメラの前でしゃべるのが仕事ですから、あまり若いときから頭がさみしいのもどうかなと思ったからです。

 一方、40歳を過ぎて薄くなったら、いっそのことスキンヘッドにしてみようかとも考えていました。ですから、スキンヘッドの司会者が、お茶の間に向かって「ふしぎ発見!」と言っていた可能性があったかもしれません。

 ちなみに、さきほどの男性アナの話ですが、当時はふさふさだったその方のほうが先に頭がさみしくなってしまったというオチがついています。

 目、歯、髪…、いろいろな話をしましたが、特に目と歯はQOLに大きく影響するので、ケアを怠らないようにしたいものですね。

(まとめ:二村高史=ライター)

草野 仁(くさの ひとし)
キャスター
草野 仁(くさの ひとし) 1944年2月生まれ。1967年東京大学文学部社会学科卒業後、 NHK入社。鹿児島放送局、福岡局、大阪局を経て、東京アナウンス室へ。主にスポーツ・キャスターとして、五輪中継をはじめ、国内外のスポーツ実況中継を担当。また、「ニュースセンター9時」「ニュースワイド」のキャスターも務めた。1985年に独立しフリーに。以降、テレビやCMなどで活躍中。趣味・スポーツは、「映画鑑賞」「ゴルフ」「カラオケ」「競馬」「剣道(二段)」と多才。