社会が変わらないと自殺は予防できない
多くの精神疾患の患者はヘビースモーカーより寿命が短縮
大西睦子
アルコールが自殺に与える影響
全米自殺防止財団は、アルコールの危険性を警告しています。アルコールは、落ち込んでいるときに、一時的に良い気分になって、悩みを忘れるのに役立つように思いがちですが、その効果は短く、逆に、長期的にはうつ病を悪化させます。場合によってはアルコールにより気分がいら立ち、家族や友人との仲を悪化させかねません。
また睡眠不足、集中力低下を引き起こします。アルコールによって大人は、罪悪感を感じたり、あるいは自尊心を欠くようになり、十代の若者たちは未成年飲酒で捕まらないように嘘をつき、親から距離をおき始めるようになると言います。
こうした理由から、アルコールが全自殺者数の少なくとも25~30%の要因であると推定されています。
アルコールや喫煙などへの依存と精神疾患は互いに作用し合ってしまう
また、精神疾患の人は、喫煙率が高まります。米国の44.3%のタバコは、精神疾患または薬物の乱用者が消費していることが報告されています。これは精神疾患に悩む人が、その他の人に比べて、喫煙の可能性が約2倍も高くなることを意味します。
The Journal of the American Medical Association「Smoking and Mental Illness」
アルコールやタバコの依存性が精神疾患をきたすのか、精神疾患によって、アルコールやタバコの依存性となるのかは、ただ一方的な作用だけではなく、互いに作用し合っているものと考えられています。
個々の自殺の理由を知ることは、複雑で困難でありますが、これまでの研究から分かっていることは、自殺による死亡者の90%は、死の時点で、治療可能な精神疾患を患っていたということです。そして、多くの場合が認識されず、未治療でした。これまでの研究や経験から、自殺の予防は、まず、沈黙の苦しみを解放し、心の病を打ち明けられる社会作りだと思います。
医学博士
