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医学博士 大西睦子のそれって本当? 食・医療・健康のナゾ

“体内時計の乱れで太る”は本当だった!

脂肪細胞の時計遺伝子がなくなると体に悪影響

 大西睦子

食、医療など“健康”にまつわる情報は日々更新され、あふれています。この連載では、現在米国ボストン在住の大西睦子氏が、ハーバード大学における食事や遺伝子と病気に関する基礎研究の経験、論文や米国での状況などを交えながら、健康や医療に関するさまざまな疑問や話題を、グローバルな視点で解説していきます。
ダイエット体験談などで「21時以降は何も食べない!」という話をよく聞きますが、どうやらこれは、体内時計に関係があるようです。今回はその体内時計について解説します。

体内時計の乱れは疲労、記憶力低下、病気にもつながる(©tiero/123RF.com)

 私たちは、一生の4分の1から3分の1の時間を睡眠に費やします。例えば、2012年の日本人女性の平均寿命は86.41歳(※)で世界一でしたが、そのうちの約22年から29年は睡眠の時間となります。もったいない、睡眠時間を削って別のことをしたい…などと思うかもしれませんが、睡眠は私たちの健康にとても重要なもの。また、睡眠時間(長さ)だけでなく、睡眠のタイミング(入眠と覚醒のタイミング)も重要です。

※ 平均寿命とは、死亡率などをもとに、その年に生まれた0歳の子どもが何年生きられるかを示す数値。

体内時計はどこにある?

 ヒトに限らず、地球上の生物は自転とほぼ同じ1日(24時間)周期で体内環境を変化させています。これを概日(がいじつ)リズムといい、もともとは昼夜の変化に適応するための生理現象を指します。でも実は、光や温度変化のない場所──昼夜の区別のないような場所で安静を保っていても、概日リズムはあるのです。このリズムをもたらすのが、体内時計と呼ばれる生体時計です。

 体内時計は体温、血圧やホルモンなどのリズムを整えます。時差ぼけや夜勤などで、睡眠と覚醒のタイミングが乱れて、疲労感、吐き気、記憶力の低下などを経験したことはないでしょうか? 体内時計が乱れてくると、こうした症状以外に、体重増加、糖尿病、高血圧やがんなどのリスクが高まることが分かっています。

 この体内時計、私たちの体のどこにあるのでしょうか?

 体内時計には、脳にある「主時計」と、全身の細胞にある「末梢時計」の2種類があります。

 主時計は、脳の奥深いところに位置する、視床下部の視交叉上核(しこうさじょうかく)という神経細胞の集団からなる小さな器官にあることが分かっています。

 その神経細胞が光の情報を受け取り、松果体に信号を送ります。松果体からは、「メラトニン」という睡眠を促すホルモンが、光の情報を受けてから約14~16時間後に分泌されます。だから、朝7時に起きて朝日を浴びると、21~23時ごろに眠くなってくるのです。以前はこの主時計が、全身の末梢時計を整えていると考えられていました。ちょうど、オーケストラの指揮者と奏者の関係みたいですよね。

昼夜が逆転した職場で働く人や睡眠障害患者は肥満になりやすい

 ところが、ペンシルベニア大学の研究者らが、いくつかある末梢時計のうち、脂肪細胞にある「Bmal1(ビーマル1)」という時計遺伝子(タンパク質)がなくなると、末梢時計の乱れが、脳に影響を及ぼすという研究結果を報告したのです。この研究の著者の1人、フィッツジェラルド博士は、「打楽器奏者が指揮者なしでドラムを叩き、その作用が指揮者に影響したようなもの」と説明しています。

 さらに研究者らは、食事の時間のずれが、エネルギーを貯蔵しやすくし、体重増加の原因になることを示しました。この結果は、昼夜が逆転した職場で働く人や睡眠障害の患者さんがなぜ肥満になりやすいか、という疑問に対し、ひとつの答えを導き出し、科学誌「Nature」に報告しました。

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