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医学博士 大西睦子のそれって本当? 食・医療・健康のナゾ

“腸内細菌”が、食物アレルギーの新たな治療薬になる!?

日本でも食物アレルギーの児童が増加傾向に

 大西睦子

食物アレルゲンへの感作を減らす常在菌

 研究者らは、腸内細菌が食物アレルギーにどのように影響するかを調査しました。まず以下の3グループのマウスで、ピーナッツのアレルゲンに対する反応を確認しています。

[1]無菌マウス:生まれて無菌状態で飼育、全く常在菌をもたない
[2]抗生物質で治療したマウス:かなり腸内細菌が減少している
[3]正常マウス:正常の腸内細菌をもつ

 各グループのマウスは、ピーナッツのアレルゲンにさらされると、無菌マウスと抗生物質で治療したマウスは、正常マウスよりも、ピーナッツのアレルゲンに対する抗体が多くできることが分かりました。つまり、無菌マウスと抗生物質で治療したマウスは、強い免疫反応を起こしたのです。

 次に、免疫反応=アレルギー反応を起こした無菌マウスと抗生物質で治療したマウスに、ヒトや動物の腸管内に常在しているクロストリジウム菌を注入すると、食物アレルゲンへの感作を減らせました。

 ところが、もっとも多い腸内細菌である、バクテロイデス菌(糖を発酵して、乳酸や酢酸などをつくる菌。糞便中の細菌の80%以上を占める)を注入しても、感作を減らすことはできませんでした。逆に言えば、クロストリジウム菌は、食物アレルゲンに対して、防御的な役割を持っていることが示されたわけです。

一般的な腸内細菌が食物アレルゲンが血流に入ることを防止する

 さらに研究チームは遺伝子分析により、この防御メカニズムはクロストリジウム菌が、インターロイキン22(IL-22)を高濃度に作り出すからだということを明らかにしました。インターロイキンは、リンパ球や単球、マクロファージなどの免疫反応への寄与が知られる白血球から作られる微量生理活性タンパク質です。30種類以上ありますが、その1つであるIL-22に、腸の内側へのアレルゲンの透過性を減少させる作用があるというのです。

 また、抗生物質で処置したマウスは、IL-22、あるいはクロストリジウム菌を投与すると、ピーナッツのアレルゲンにさらされたとき、どちらも、コントロールと比較して、血液中アレルゲンのレベルが低下しました。

 以上から、研究者らは、一般的な腸内細菌であるクロストリジウム菌が、ピーナッツのアレルギーから人体を保護することを発見しました。クロストリジウム菌は、食物アレルゲンが血流に入ることを防止し、アレルギーを引き起こす食物アレルゲンに感作されることを最小限にします。この発見は、私たちに良い影響を与える微生物である、プロバイオティクスを利用した療法の開発における重要なステップです。チームは、プロバイオティック治療の開発に取り組み、現在、仮特許を申請しています。

 この研究成果について、ナグラー教授は「母親の立場になれば、子どもが食べ物をひと口食べるたびに心配しなければならないことが、どれほど恐ろしいか、想像に難くありません」といいます。そして「食物アレルギーに対し、どの細菌がどのように介入できるのかを知り、とても興奮しています。まだ保証はありませんが、治療法のない疾患に対する治療薬として、検証が可能です」と述べています。

大西睦子(おおにし むつこ)
医学博士
大西睦子(おおにし むつこ) 東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科にて、造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。2008年4月より、ハーバード大学にて、食事や遺伝子と病気に関する基礎研究に従事。著書に『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)。
日経トレンディネット2014年9月19日付け記事からの転載です。

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