グルテンフリーダイエットって誰が必要なの?
健常な人の減量効果には疑問の声も
大西睦子
グルテンフリーダイエットが健康に悪影響をおよぼす!?
炭水化物は、消化されて約4kcal/gのエネルギーを生み出す消化性炭水化物(いわゆる糖質)と、消化できずに腸内細菌が醗酵分解して0~2kcal/gのエネルギーを生み出す難消化性炭水化物に分けられます。後者には、食物繊維や糖アルコールが含まれます。
小麦由来の難消化性炭水化物は、食後の血糖及びインスリンの増加を抑え、空腹時の血中(血清)中性脂肪を減らし、さらに体重を減らすことが報告されています。またフラクトオリゴ糖は、免疫状態、脂質代謝、およびビタミン・ミネラル吸収を改善するとされます。
ですから厳格なグルテンフリーダイエットは、逆に健康に悪影響をおよぼす可能性があるのです。事実、最近ではグルテンフリーダイエットが有益な腸内細菌を減少させる可能性まで示唆されるようになりました。
グルテンと健康
小麦や炭水化物のメリットだけでなく、グルテン自体もセリアック病やグルテン過敏症以外の、高脂血症の方の食事療法として、有益という報告もあります。
高脂血症と診断された24人の成人に、2週間、小麦グルテンの消化を増やす食事を指示したところ、13%の人の血清中の中性脂肪が減少しました。
またグルテンには、血圧調節や免疫システムに重要な役割があるのではないかともいわれています。
グルテンのタンパク質の栄養的価値は?
グルテンは、簡単に言えば、植物由来のタンパク質です。タンパク質としてのグルテンを理解するために、まずは植物由来のタンパク質と動物由来のタンパク質の違いに触れておきましょう。
タンパク質は、アミノ酸が結合して構成されています。タンパク質を合成するために必要な20種類のアミノ酸のうち、9種類は体内で合成できない必須アミノ酸で、残りの11種は非必須アミノ酸です。アミノ酸の量や必須アミノ酸の割合は食品によって異なるため、通常、アミノ酸スコアを用いて食品たんぱく質の栄養価を評価します。
アミノ酸スコアは、国際連合食糧農業機関(FAO)や世界保健機構(WHO)の提示する国際基準値を100として、該当する食品に含まれる9種の必須アミノ酸の量を比較します。それぞれどの程度含まれているかを数値化し、そのうち最も不足している必須アミノ酸(=第一制限アミノ酸)を数値で示します。これは、アミノ酸全体の働きは不足するアミノ酸(=制限アミノ酸)に支配されるからです。タンパク質を体内で利用するためには、必要な必須アミノ酸をバランスよく含んでいなければなりません。
いわゆる高タンパク質食品とは、アミノ酸スコアの高い食品を指し、その値は100に近くなります(あくまでも第一制限アミノ酸のスコアが国際基準をほぼ満たしている=100に近いのが高タンパク質食品であって、それぞれの必須アミノ酸の含有バランスが偏っていないとは限りません)。肉や魚、乳製品など動物性タンパク質のアミノ酸スコアは、ほとんどが100です。一方、植物性タンパク質は、例えば大豆が86、米が65、トウモロコシが42、小麦は37などというように、アミノ酸スコアが低くなります。
小麦グルテンには必須アミノ酸のリジンが不足しているため、アミノ酸スコアは45くらいと低めです。となると、慢性腎不全などでタンパク質摂取量が制限される疾患の場合、グルテンはあまり摂りたくないタンパク質となります。なぜならアミノ酸スコアが高い高タンパク質食品を取ったほうが、補給できる必須アミノ酸量が多いからです。つまり栄養的には価値が低めのタンパク質ともいえます。
となるとやはり、グルテンの摂取にメリットはないのでしょうか?
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