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医学博士 大西睦子のそれって本当? 食・医療・健康のナゾ

痩せない理由は腸内にあり? 腸内細菌叢を整える

食物繊維の多い食事が腸内細菌の良いエサに

 大西睦子

腸内細菌を交換しても、食事を変えなければ減量に効果なし

 ではなぜ、一般には、伝染病のようにマウスの痩せは広がらないのでしょうか?

 重要なのは、この研究が「食事に左右されるもの」だったことです。

 2つのグループのマウスを一緒のケージに収容させた際も、与えた食べ物によって結果に違いが出ました。食物繊維が多く飽和脂肪酸の少ない、健康的な食事を与えたときは、痩せた人の腸から移した細菌の影響をうけた肥満マウスは、体重が減少しました。

 ところが、食物繊維が少なく飽和脂肪酸を多く含む、典型的な西洋食を与えたときには、 痩せマウスと肥満マウスは互いの腸内細菌の影響を受けないように見えたのです。要するに、腸内細菌を交換しても、食事を変えなければ減量に効果はないと考えられます。

食事で腸内細菌叢を変えるには、どのくらい時間がかかる?

 ここで、「よし、健康的な食生活に変えて腸内細菌叢を変えよう!」と思われた方、どのくらいで効果がでるか気になりますよね。

 ハーバード大学のターンバウ博士らは、食事を「完全な動物性食品(肉、卵やチーズなど)」から、「完全な植物性食品(穀物、レンズ豆、野菜や果物など)」に、あるいはその逆に変えると、腸内細菌叢は、なんと1日足らずで変化すると報告しました。

 例えば、動物性食品の食事を摂ると、胆汁に耐性のある細菌、ビロフィラ・ワーズワーシア(Bilophila wadsworthia)が増えていました。ビロフィラ・ワーズワーシアは、炎症性の腸疾患との関係が示唆されている細菌で、この変化が私たちの健康にどのような影響を与えるかは、次回の研究成果が期待されますが、食物繊維の多い、バランスのとれた食事が、私たちの腸内細菌叢のよいエサになることは明らかです。

 ちなみに、タンパク質や脂質の多い、低炭水化物ダイエットも、腸内細菌叢には良い影響を与えないようですね。

腸内細菌叢を利用した「痩せ薬」も出てくる!?

 ところで、腸内細菌叢を利用した「痩せ薬」って可能なのでしょうか?

 最近、大手の製薬会社が、腸内細菌叢を利用した治療薬の開発を進めています。

 米国セカンドゲノム社は、製薬メーカーであるファイザー社と提携し、大規模な観察研究によって、腸内細菌叢と肥満や代謝疾患の関係についての研究を行うことを2014年5月に発表しました。さらにこの研究により、腸内細菌叢が、肥満などの治療薬のターゲットになる可能性があります。科学の進歩の速さには本当に驚かされますが、とはいえ研究はこれからといったところ。すぐに夢のような「痩せ薬」ができることはなさそうですね。

 つまり私たちが、今すぐ今年の夏に向けてできるとこは、食生活を改善し、健康的な腸内細菌叢で、肥満やメタボリックシンドロームの予防することですね!

大西睦子(おおにし・むつこ)
大西睦子(おおにし・むつこ) 医学博士。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科にて、造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。2008年4月より、ハーバード大学にて、食事や遺伝子と病気に関する基礎研究に従事。著書に『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)。
日経トレンディネット2014年5月16日付け記事からの転載です。

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