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医学博士 大西睦子のそれって本当? 食・医療・健康のナゾ

“やる気”が起きない理由はドーパミン不足? オレキシン不足?

“快楽”や“報酬”だけを求めると、依存症や中毒の原因にも

 大西睦子

バイオロジー面ではドーパミンが問題に

 それでは、バイオロジーの面からモチベーションを考えるとどうなるでしょうか?

 まず問題になるのは、ドーパミンです。米国コネチカット大学のジョン・サラモン博士らは、ドーパミンが意欲を高める機能の謎について報告しています。


 そもそもドーパミンは、いつも出ているわけではありません。私たちが日常生活で何か行動し始めるときに、ドーパミンが分泌されます。

 ドーパミンが分泌されるのは、あくまでもそれまでに連続して学習してきたことによる動機付けがあってのこと。例えば、あなたが朝起きてから夜寝るまでの行動を考えてみてください。朝の洗顔、歯磨き、朝食など、あなたが子どものころから学習してきて、習慣となっているすべての行動に動機があり、そこにはいつもドーパミンが働いています。

 また、何らかの行動によって脳が感動や喜びを覚えたときにも、ドーパミンが分泌され、私たちに快楽をもたらします。例えば映画、スポーツや音楽などに強く感動したときにはドーパミンが分泌されているのです。

ドーパミンとモチベーションとの間の関係とは

 ところがそういった“快楽”や“報酬”だけを欲するようになると、ドーパミンの分泌をコントロールできなくなり、依存症や中毒になります。コカインなど覚醒剤による薬物依存症にはドーパミンが関わっています。薬物を投与するとドーパミンが分泌され、快感や満足感が得られます。このドーパミンが枯渇すると、また薬物が欲しくなります。こうして薬物に対する依存症となるのです。

 実は、食事にもドーパミンは関与しています。食事を始めると私たちの体内ではドーパミンが分泌され、食欲が増します。そのうち、連続した学習により、食べ物を想像するだけで、ドーパミンが分泌されるようになります。例えば食べもののCMや写真、料理の音やにおいでだけでもドーパミンが分泌され、食欲が増進するわけです。こうして、私たちは、おいしく食生活を楽しんでいます。

 ところが、食事に対する“快楽”の欲望が強くなると、ドーパミンが過剰に分泌されるようになり、薬物依存症と同じように、大量のドーパミンの影響で依存症=過食に走ります。過食が一時的な快感や興奮、満足感を与えるのです。ただしその快感はすぐに効果がなくなり、再び暴飲暴食に走ることになります。やがて食欲に対するバランスが崩れ、コントロールできなくなり、食べ物依存症や中毒に陥ります。過食に関係する(むちゃ食い障害、神経性過食症や肥満など)人々の行動は、薬物依存症の人たちに似ています。むちゃ食い障害や神経性過食症の人には、薬物やアルコールの乱用も認められます。

 つまり、ドーパミンとモチベーションとの間の関係は、単純ではなく、正にも負にも働くのです。

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