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医学博士 大西睦子のそれって本当? 食・医療・健康のナゾ

「砂糖税」は日本でも導入が検討!? 本当に肥満対策になる?

メキシコや米バークレー市で始まった砂糖税の効果

 大西睦子

英国でも砂糖税の議論が始まる

 砂糖税の話題は、英国でも盛んに報じられるようになりました。

 発端は2015年10月、イギリス公衆衛生局(Public Health England)がまとめた報告書です。ここには英国人の、砂糖の摂取過多が肥満や病気の原因となっていること、またそれに対する取り組みが提案されています。

■参考文献
Public Health England「Sugar Reduction: The evidence for action

 提案は8つありますが、英メディアでは、特に砂糖税(ここでは砂糖がたくさん含まれている食品や飲み物に、10~20%の課税をすること)が注目を浴びています。ただし、BBCによると、デビッド・キャメロン首相(当時)のスポークスマンは、首相は砂糖税を導入する意思がないと表明しています。

■参考文献
BBC「Sugar tax and offers ban 'would work’

税金で、私たちの肥満の原因となる食習慣は変えられる?

 メキシコやバークレー市のソーダ税の開始後、ソーダの売り上げばかりが議論されていますが、肥満は改善したのでしょうか?

 実は、メキシコではソーダをやめた人は、同じだけ糖分が含まれるオレンジジュースを飲んでいるかもしれないという問題があり、この点は未解決のままです。メキシコにおける取り組みが、メキシコにおける肥満問題を解決できるかは、長期的な観察が必要です。

 非常に興味深いのは、ニューヨークタイムズ紙に報告された米フィラデルフィア市の取り組みです。清涼飲料水の業界は、イメージの向上のロビー活動ために、フィラデルフィア市小児病院に1000万ドルの寄付をしました。そのためフィラデルフィア市では、市議会でソーダ税は可決しませんでした。ところがフィラデルフィア市では、学校での甘い飲料の販売を禁止し、公共の場において自動販売機の設置を制限しました。さらに公立の学校で、子どもたちに栄養の授業にて教育をうながし、市は、健康な食品の販売に優遇処置を配慮するようになりました。また、メニューの栄養表示、テレビやラジオの広告を通じて、親に子どもに甘い飲み物を与えることを考え直すことを奨励しました。

 こうして、フィラデルフィア市では、10代の若者が1日に摂取する甘い飲み物の割合が、2007年の31.1%から、2013年までに23.7%に低下しました。同じ時期の7年間に、フィラデルフィア市では、小児の肥満が21.7%から20.3%に、重度の肥満が8.5%から7.3%に減少しています。つまり、フィラデルフィア市における成功は、ソーダ税ではなく市の健康促進のための政策によるものだったのです。

■参考文献
The New York Times Company「The Decline of ‘Big Soda’

 厚生労働省の「平成25年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、40~60代男性の約3人に1人は、ボディマス指数25以上の「肥満」という結果が出ています。ただしWHOや米国だとボディマス指数25以上は「過体重 」で、30以上が「肥満 になります。つまり、日本の肥満問題は、欧米に比較すると深刻ではありません。

■参考文献
厚生労働省「平成25年 国民健康・栄養調査結果の概要

 ただし、全国清涼飲料工業会のデータによると、日本人1人あたりの清涼飲料水の消費量は、2005年の約140リットルから、2014年には約158リットルに増加しています。日本でもメキシコや米国に劣らず、多くの清涼飲料水が消費されているのです。

■参考文献
全国清涼飲料工業会「1人あたりの消費量推移

 多くの方が実感されると思いますが、一般的に、食習慣を変えるには時間がかかるものです。肥満対策の根本は、罪としてのソーダ税や砂糖税を強いるより、私たち一人ひとりが、健康にとって何が良い食品か理解し、バランスの良いヘルシーな食生活を楽しむことだと思います。砂糖の摂取が、罪として税を課されるより、バランスの良いヘルシーな食生活を楽しむほうが、肥満対策として有効だと思います。

大西睦子(おおにし むつこ)
医学博士
大西睦子(おおにし むつこ) 東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科にて、造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。2008年4月より、ハーバード大学にて、食事や遺伝子と病気に関する基礎研究に従事。著書に『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)。
日経トレンディネット2015年12月1日付け記事からの転載です。

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