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医学博士 大西睦子のそれって本当? 食・医療・健康のナゾ

炭水化物って、本当に悪者なの?

ライフスタイルは何から改善すべきか

 大西睦子

食、医療など“健康”にまつわる情報は日々更新され、あふれています。この連載では、現在米国ボストン在住の大西睦子氏が、ハーバード大学における食事や遺伝子と病気に関する基礎研究の経験、論文や米国での状況などを交えながら、健康や医療に関するさまざまな疑問や話題を、グローバルな視点で解説していきます。  今回は、ダイエットで何かと話題の「炭水化物」について。

 もし東京から大坂まで早く移動したいのなら、バスではなく新幹線を、もし早くたくさんの情報を収集したいのなら、図書館ではなくインターネットを使用しますよね。では、体の運動機能をうまく働かせたいときは、どうでしょう?

 これには効率の良いエネルギー=炭水化物を摂取する必要があります。

低炭水化物ダイエットで起きる体内燃料カス問題

 食事から摂取した炭水化物は消化され、ブドウ糖にまで分解されます。ブドウ糖は、体のほとんどの細胞にとって、最も効率の良いメインのエネルギー源であり、不要な副産物=燃焼カスも出ません。

行き過ぎた低炭水化物ダイエットを続ければ、健康に悪影響が。(© lightwise/123RF.COM)

 ところが、エネルギー源としてタンパク質を使った場合にはアンモニアが、脂肪を使用した場合にはケトン体という副産物=燃焼カスが出ます。私たちの体は、これらの燃焼カスを処理するシステムを持ってはいます。

 このうち細胞内で生じた毒性の強いアンモニアは、グルタミンやアラニン(主に筋肉)に変換されて血中に入り、肝臓に運ばれ、肝臓で比較的無害な尿素に変換されます。まさしく燃焼カスなわけです。

 一方ケトン体も主に肝臓で作られますが、絶食時などブドウ糖が枯渇した時には重要なエネルギー源となります。過剰な摂取が問題で、ケトアシドーシス(ケトン体が過剰に蓄積し、体内が酸性に傾く状態)などの恐れも出てくるわけです。

 つまり取り過ぎ傾向の炭水化物を減らす、という意味の低炭水化物ダイエットは大いに結構なのですが、糖質をゼロに近いくらいに減らして、脂肪とタンパク質から必要なカロリー摂取するという行き過ぎた低炭水化物ダイエットを続ければ、健康に悪影響があります。脂肪とタンパク質摂取でできた燃料カスが、体内で処理できなくなり健康に害をおよぼしますし、「炭水化物さえ避けていればたくさん食べても太らない」という誤った考えまで刷り込まれる恐れもありますから。

なぜインスリンは「肥満ホルモン」と呼ばれるのか

 では炭水化物を摂取して、効率の良いエネルギー源、ブドウ糖にするには、どうしたらいいのでしょう? 実はこれ、本当に使いようなんです。

 食事にともない血液中の糖の濃度=血糖値が上がると、インスリンがすい臓から分泌されて、血液から余分なブドウ糖を除こうとします(血糖値を下げようとする)。この際インスリンが作用するとブドウ糖はグリコーゲンに変わり、肝臓や筋肉で蓄えられます。こうして血液中からブドウ糖が除かれ、血糖値が下がるのです。

 グリコーゲンは、必要なときにすぐ分解されてエネルギーになる物質です。よって運動をすると、グリコーゲンが分解されて糖になり、エネルギー源として使われるようになるわけです。

 だから、運動前に炭水化物(糖質)を十分に摂って、筋肉の燃料であるグリコーゲンを増やしておくことは重要で、例えば筋肉トレーニングをするにも筋肉中のグリコーゲンが少ないと、筋肉の成長が期待できなくなります。また運動直後に炭水化物(糖質)を摂れば、速やかな筋肉のグリコーゲン回復につながります。

 ただし、運動せずに炭水化物を食べ過ぎると、肝臓や筋肉に蓄えられるグリコーゲンには限度があるので(グリコーゲンの貯蔵庫が満タンになるというか……)、インスリンは脂肪細胞に働きかけます。そして最後に余ったブドウ糖は脂肪に変化して、脂肪細胞に体脂肪として溜め込まれるのです。ですからインスリンは「肥満ホルモン」と呼ばれているんですね。

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