母乳と粉ミルク、赤ちゃんにはどちらがいいの?
“どちらがベスト”という安易な結論付けはしない方がいい
大西睦子
食、医療など“健康”にまつわる情報は日々更新され、あふれています。この連載では、現在米国ボストン在住の大西睦子氏が、ハーバード大学における食事や遺伝子と病気に関する基礎研究の経験、論文や米国での状況などを交えながら、健康や医療に関するさまざまな疑問や話題を、グローバルな視点で解説していきます。
日本では偽物がインターネットで販売されるなど、「母乳」に関するニュースが飛び交い、母乳についての議論が活発ですが、米国でも「母乳神話」とも呼べる説が唱えられ、賛否両論が巻き起こっています。
WHOも米国小児科学会も厚生労働省も勧める母乳だが

WHO(世界保健機関)や米国小児科学会は、母乳栄養が、母子ともに体と心に良い影響を与えるとして、生後6カ月までは、赤ちゃんを母乳で育てることを推奨しています。厚生労働省もまた、できるだけ母乳で赤ちゃんを育てることを推奨しています。
WHO「Breastfeeding」
the American Academy of Pediatrics「Breastfeeding and the Use of Human Milk」
厚生労働省「乳幼児突然死症候群(SIDS)について」
これに疑問を投げかけたのが、ハーバード大学公衆衛生大学院のフィリップ・グランジャン(Philippe Grandjean)教授らです。WHOは環境中の化学物質による母乳の汚染を考慮していないというのが、教授らの主張です。
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- 母乳は汚染されている!?