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医学博士 大西睦子のそれって本当? 食・医療・健康のナゾ

チョコレートは罪な快楽? それとも健康食品?

ポリフェノールの効果を打ち消す糖分の取り過ぎに要注意

 大西睦子

フラバノールの作用

 では、実際にチョコレートやココアを摂取すると、どのような影響があるのでしょうか? チョコレートやココアに含まれたフラバノールは、身体に良い影響を与えているのでしょうか?

【1】血圧、心血管疾患

 生体内で合成され、さまざまな機能を持つ窒素酸化物の1種である一酸化窒素は、血管内皮細胞から作られます。この一酸化窒素が、血管の健康状態を維持する血管内皮機能を調節しています。フラバノール含有量の高いココアを摂取すると、一酸化窒素が増え、血管拡張(血圧低下)、血小板凝集抑制(抗動脈硬化)などにつながります

 いくつかの研究により、心血管疾患のリスク因子を有する患者さんが、フラバノール含有量の高いココアドリンク(176-185mg)を摂取すると、一酸化窒素の循環レベルが急速に、ココアドリンクを飲む前の3分の1以上、増加したと報告されています。また、ココアのフラバノールには活性酸素の発生やその働きを抑制する抗酸化効果もあり、市販のダークチョコレート(74%ココア)40g摂取の2時間後に、血液中の抗酸化状態の大幅な改善が報告されています。

 また、いくつかの比較試験で、ダークチョコレートが高血圧患者の血圧に与える影響が調査されており、2003年、2005年の報告では、対象者を2群に分けて調査。ダークチョコレート100gを食べるグループと、90gのフラバノールを含まないホワイトチョコレートを食べるグループに分けた結果、ダークチョコレートを摂取したグループは、2003年時は収縮期血圧5.1+/-2.4mmHg、拡張期血圧1.8+/-2.0mmHg、2005年時は、収縮期血圧11.9+/-7.7mmHg、拡張期血圧8.5+/-5.0mmHgと、数値の低下が報告されました。ホワイトチョコレートを食べたグループは血圧が下がりませんでした。

 ところが一方で、効果が認められなかったという研究も報告されてきています。

 そこで2012年に、それまでの20の研究のメタ分析(複数の研究結果、研究データを計算してまとめる手法)が行われ、その結果、平均、収縮期血圧2.77mmHg、拡張期血圧2.20mmHgの低下が認められました。

 一般的に、収縮期血圧3mmHgの低下で8%の脳卒中の死亡率、5%の冠動脈疾患の死亡率、4%の全死因の死亡率のリスクが低減すると推定されています。

【2】インスリン抵抗性、認知症

 フラバノールは、インスリン抵抗性を減らすことが期待されています。

 フラバノールが豊富なココア100gを含む食事を15日間続けた高血圧患者の調査では、インスリン抵抗性が低下したことが報告されています。インスリンは脳機能の調節に重要な役割があり、認知機能障害の一因として考えられています。

 フラバノールを少なくとも520mg、毎日摂取している高齢者は、認知能力の大幅な改善を示し、インスリン抵抗性の減少との関連が分かりました。つまり、フラバノールの摂取は、心血管の健康と認知機能を改善する可能性があるのです。

【3】注意事項

 ほとんどの市販のカカオ製品は、たくさん摂取すると、飽和脂肪酸や糖分により、カロリー(500kcal/100 g)の摂り過ぎになります。そして、カカオのプラスの効果を打ち消すほどの、体重増加や血糖の上昇を招きます。

【4】副作用

 チョコレートは胃腸の症状、片頭痛やイライラ感を引き起こすと報告されていますが、これらの副作用は、臨床試験で実証されていません。また、チョコレートはカフェインが含まれているため、頻脈性不整脈、睡眠障害のリスクを高める可能性がありますが、普通の量を単独に摂取してもカフェインの量は問題になりません。


 以上から、チョコレートは健康食品ですが、市販のチョコレートの食べ過ぎは、カロリーの過剰摂取となり、メリットがなくなります。特に肥満の方にとって、チョコレートは罪な快楽として懸念されています。

 一方、バランスの取れた食事に、ヘルシーなダークチョコレートを組み合わせることは、おいしい健康食品として、おすすめですよ。

大西睦子(おおにし むつこ)
医学博士
大西睦子(おおにし むつこ) 東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科にて、造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。2008年4月より、ハーバード大学にて、食事や遺伝子と病気に関する基礎研究に従事。著書に『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)。
日経トレンディネット2014年12月19日付け記事からの転載です。

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