大気汚染で認知症リスク高まる? 米国で大論争
研究は過渡期ながらも、大気汚染がいい影響を与えていないことは明らか
大西睦子
食、医療など健康にまつわる情報は日々更新され、あふれています。この連載では、米ボストン在住の大西睦子氏が、ハーバード大学における食事や遺伝子と病気に関する基礎研究の経験、論文や米国での状況などを交えながら、健康や医療に関するさまざまな疑問や話題を、グローバルな視点で解説していきます。今回は、大気汚染と認知症の関係について、解説していきます。
大気汚染が認知症リスクになる?

日本では2025年にも65歳以上の5人に1人が認知症になるとされています(出典:内閣府「平成28年版高齢社会白書(概要版)」)。そんななか、2017年5月にはエーザイが人の嗅覚を利用して認知症の兆候をつかむ簡易検査キットの販売を始めたり、日本大学工学部(福島県郡山市)が認知症に移行する前段階の「軽度認知障害(MCI)」を簡易に高精度で判定する手法を開発したりと、治療や予防に関するニュースは後を絶ちません。
米国では2017年1月から2月にかけて、「大気汚染と認知症」の関係についてのさまざまなニュースが飛び交いました。これはカナダのオンタリオ州公衆衛生研究所(PHO)などの研究者らが、住民ベースの大規模なコホート試験に基づき、「主要道路(幹線道路)沿いの生活と認知症、パーキンソン病(PD)、多発性硬化症(MS)の発病率」を2017年1月4日版の医学雑誌「ランセット」のオンライン版で発表したことがきっかけです。
THE LANCET「Living near major roads and the incidence of dementia, Parkinson's disease, and multiple sclerosis: a population-based cohort study」
調査を具体的に見ていきましょう。
