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医学博士 大西睦子 食・医療・健康のナゾ

大気汚染で認知症リスク高まる? 米国で大論争

研究は過渡期ながらも、大気汚染がいい影響を与えていないことは明らか

 大西睦子

幹線道路から50m未満のエリアに住む人の認知症リスク

 調査対象になったのは、2001年4月1日時点でカナダで最も人口の多いオンタリオ州に5年以上住んでいた20~85歳のカナダ人、680万人です。調査を開始する5年前に当たる1996年に、研究者らは郵便番号を利用して、対象者が住むエリアを幹線道路からの距離で50m、50~100m、101~200m、201~300mに分けてグループ化。その後、2001年から2012年までの10年間にわたって、認知症、パーキンソン病、多発性硬化症の発症を追跡しました。

 調査の結果、認知症は24万3611人、パーキンソン病は3万1577人、多発性硬化症は9247人が発症していました。また対象者680万人のうち半分以上が幹線道路から200メートル以内に、95%は1000m以内に在住しており、このうち認知症の発症リスクは、幹線道路から近い場所に住むにつれて高まるという数値が現れました。

■50m未満在住者 :認知症のリスクが7%増加
■50~100m在住者 :認知症のリスクが4%増加
■101~200m在住者:認知症のリスクが2%増加
■201~300m以上離れている人:リスクの増加認められず
 ※300m以上離れた場所の在住者に対しての比率

 一方、パーキンソン病と多発性硬化症との間に相関はありませんでした。ただしこの研究では交通量の多さと認知症の関係は指摘できるものの、大気汚染だけが要因とは言い切れないので、今後は大気汚染を引き起す粒子と認知症との関係や、騒音との関係についても詳しく調べるとしています。

大気汚染で犬が精神錯乱、飼い主が分からなくなった?

 大気汚染と健康については、今回の調査以前にも、さまざまな研究が行われています。例えば米国立衛生研究所(NIH)では30年間、研究者らが大気汚染が健康に与える影響(呼吸器疾患、心血管系疾患、妊娠合併症や死亡など)を調査してきており、その情報は公式サイトで公開されています。

 ではいつごろから大気汚染が認知症に与える影響について、取りざたされるようになったのか。科学誌「サイエンス」によればこれは、2003年に現在米モンタナ大学教授の神経科学者リリアン・カルデロン・ガルシデューナス博士ら博士らが報告した「メキシコの認知症の犬」に関する論文がきっかけです。

 ガルシデューナス博士は、メキシコシティの中でも特に汚染された地域に住む年老いた犬たちが、老いとともに精神錯乱に陥って方向感覚を失ったり、飼い主が分からなくなったりする事態が相次いでいるという指摘を受け、同症状で死亡した犬たちを解剖することになりました。すると解剖した犬の脳は汚染の少ない都市の犬に比べて、脳の広範囲にアルツハイマー病に関連するアミロイドβと呼ばれるアミロイドβタンパク質の沈着(プラーク)が認められたのです。

 さらにガルシデューナス博士らは、事故で死亡したメキシコシティの小児や若者の脳の調査でも、同じようにプラークのレベルや脳の免疫細胞の炎症の徴候が上昇していていることを発見しました。

 ただしこの研究は厳密な方法で行われたものではなく、またアミロイドβタンパク質の沈着が必ずしも認知症に直結するとは言えないため、エビデンスのレベルは高くありませんでした。ところが後に、この論文の重要性が高まることになります。

■参考文献
National Institute of Environmental Health Sciences「Air Pollution

US National Library of Medicine, National Institutes of Health「DNA damage in nasal and brain tissues of canines exposed to air pollutants is associated with evidence of chronic brain inflammation and neurodegeneration.

Science「THE POLLUTED BRAIN

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