ジャンクフードの食べ過ぎで脳が萎縮する!?
海馬の発育に影響を与えるのは教育、収入でなく、食事パターンの差だった
大西睦子
食、医療など“健康”にまつわる情報は日々更新され、あふれています。この連載では、現在米国ボストン在住の大西睦子氏が、ハーバード大学における食事や遺伝子と病気に関する基礎研究の経験、論文や米国での状況などを交えながら、健康や医療に関するさまざまな疑問や話題を、グローバルな視点で解説していきます。
健康的な食事とはいえないと分かっていても、つい手が伸びてしまうファストフード。こうした食事が脳にも悪影響を与えるという研究が発表され、話題を呼んでいます。
“ジャンクフード”は肥満、糖尿病、心臓病の要因…だけじゃない

ポテトチップスや甘い清涼飲料水、インスタントラーメン、ハンバーガーにクッキーなどの加工食品やファストフードは好きですか? こうした食品は、塩分、糖分、脂質、カロリーを過剰に含むことが多く、良質なたんぱく質、ビタミン、ミネラルや食物繊維などの栄養価は低いため、「ジャンク(=がらくた)フード」と呼ばれますね。ジャンクフードを食べ続けると、肥満、糖尿病や心臓病などの生活習慣病になりやすいことはご存じの通りかと思います。
さらに最近の研究では、ジャンクフードが脳にも悪影響を与えることが明らかになってきました。
食べ物が左右するうつ病やうつ状態のリスク
オーストラリアのディーキン大学(Deakin University)のフェリス・ジャッカ(Felice Jacka)教授は、栄養精神医学の分野に関する研究のパイオニアです。ジャッカ教授はまた、食事や栄養が私たちの心身の健康を左右する役割を担うと主張する、国際栄養精神医学研究学会(International Society for Nutritional Psychiatry Research:ISNPR)の会長も務めています。
ジャッカ教授らは以前から野菜、果物、全粒穀物や魚など、栄養価の高い食品を多く摂取する食事パターンはうつ病やうつ状態のリスクを減らし、一方で飽和脂肪酸および精製された炭水化物を多く含む西洋型の食事パターンは、そのリスクを高めるという研究を報告していました。
そして2015年3月、うつ病など精神医学における食事や栄養の影響について、世界で行われている研究の成果をまとめ、「Lancet Psychiatry」誌上で発表。食事や栄養が脳の正常な機能を左右し、結果として心の健康を決定する中心的な役割を果たす点に注目し、研究を進めていると公表しました。
The Lancet Psychiatry「Nutritional medicine as mainstream in psychiatry」
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