睡眠時無呼吸症候群を治していびき封印→愛復活!?
症状がひどい場合はCPAP療法も検討を
大西睦子
食、医療など“健康”にまつわる情報は日々更新され、あふれています。この連載では、現在米国ボストン在住の大西睦子氏が、ハーバード大学における食事や遺伝子と病気に関する基礎研究の経験、論文や米国での状況などを交えながら、健康や医療に関するさまざまな疑問や話題を、グローバルな視点で解説していきます。
忙しい1日を終えてようやく眠りについたと思ったら、パートナーや子どもに「うるさい!」と叩き起こされた…という経験のある人はいませんか? いびきは家族、パートナーとの関係に、深刻な問題をもたらすこともあるようです。それがもし、睡眠時無呼吸症候群の症状だとしたら、ますます深刻です。
今回は睡眠時無呼吸症候群について解説します。
睡眠不足の人はパートナーを大切にできない人!?

先日、近所に住む友人が、こんなことを話していました。「うちの夫、いびきがひどいの。それに、ときどき寝ているときに呼吸が止まるのが心配で、一緒にドクターに相談に行ったら、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:以下SASと表記)と診断を受けて、CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法※1)という鼻のマスクを使った治療を自宅で始めたのよ。でも彼はすぐに不快だからと、CPAPをあきらめてしまって、いびきは治らないまま。私は全然眠れなくなり、結局、別の部屋で寝ることにしたの。ロマンスなんて夢のようよ」
寝るときに鼻に装着したマスクから空気を送りこむことで、一定の圧力を空気の通り道である気道にかける方法。
米カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)の研究者らは、2013年米ニューオーリンズで開催された、パーソナリティ&ー社会心理学会(Society for Personality and Social Psychology)で、睡眠不足は、ロマンチックなパートナーの関係にマイナスの影響を与えると報告しました。
この研究には、18歳から56歳の60以上のカップルが参加しました。研究のための実験は2つ。
1つ目の実験は、参加者にパートナーへの感謝の気持ちを日記につけてもらうというもの。良い睡眠と悪い睡眠のパターンが、感謝の気持ちにどれだけ影響するのかを見るのです。
2つ目の実験は、カップルが問題解決の仕事に取り組む姿を録画するというもの。睡眠のパターンにより、問題解決に影響が出るのか調べるわけです。
結果は、睡眠不足だとパートナーへの感謝の気持ちや、パートナーに対する理解力が減り、パートナーを大切にするのが難しくなることが分かりました。
米国の睡眠時無呼吸症候群は約2200万人!
米国睡眠時無呼吸協会(American Sleep Apnea Association:ASAA)によると、約2200万人の米国人がSASを患っていると推定されています。ちなみに、米国では、糖尿病の患者は約2900万人(2012年)、喘息の患者は約2500万人(2009年)ですから、SASで苦しんでいる人の数の多さが想像できます。
American Diabetes Association「Statistics About Diabetes」
American Academy of Allergy, Asthma & Immunology「Asthma Statistics」
ところがSASに対する誤解から、未診断のまま、適切な予防や治療が行われていないことが多く、米国では大きな問題となっています。
以下に、よくある誤解について見ていきましょう。
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