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医学博士 大西睦子 食・医療・健康のナゾ

新・遺伝子改変技術でマッチョな豚が誕生

新技術は「自然に起こる遺伝子の変異を加速しただけ」なのか?

 大西睦子

肉の質量は良くても、出産の困難さや生存率で問題がある

 イエン博士は、このマッチョ豚は、マッチョな牛と同じように、肉の量や質などの利点があると述べています。ただし欠点もあり、例えば豚のサイズが大きすぎて出産が困難であることや、さらに32匹のうち8カ月まで生き延びたのは13匹のみでした。さらに現時点では13匹のうち生存しているのは2匹だけで、健康なのは1匹だけだと見なされています。

 キム博士とイエン博士は、このマッチョ豚から肉を生産するより、マッチョの雄豚の精子を農家に売って、正常な雌豚と交配させることを考えています。この交配による子孫の2つのミオスタチン遺伝子は、1つが変異のある遺伝子(マッチョのもと)で、もう一つが正常遺伝子となり、2つとも変異遺伝子であるマッチョ豚よりも、筋肉は少なくなっても健康になると予想できます。

 研究者らは、「CRISPR-Cas9(クリスパー・キャス9)」というさらに新しいゲノム編集技術を用いて、同じ実験を始めています。CRISPR-Cas9(クリスパー・キャス9)は、TALENよりさらに迅速に効率よく、目的とする遺伝子のDNA配列の、好きな場所を編集できます。

中国が最初のマッチョ豚を売る

 それぞれの国が、新しい遺伝子改変技術を利用した農業用の植物や動物への応用について、どのように規制するかを考え始めています。すでに従来の遺伝子組み換えよりも規制が緩やかになっている国もあります。米国とドイツでは、この方法の場合、新しいDNAがゲノムに組み込まれていないため、いくつかの作物が規制から外れると宣言しています。

 これに対し、北海道大学の石井哲也博士は、ゲノム編集が動物に利用されるようになると、人々の懸念は強まると、ネイチャーニュースに対しコメントしています。また「遺伝子編集に多額の投資をしている中国は、歴史的に見ても規制がゆるい」(石井博士)ということもありそうです。

 それでもキム博士は、マッチョ豚の精子を、豚の需要が増えている中国で売ることを期待しています。キム博士は、「中国が最初のマッチョ豚を売る」とコメントされています。

 みなさんは、この技術を用いた食品への応用、どう思われますか?

大西睦子(おおにし むつこ)
医学博士
大西睦子(おおにし むつこ) 東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科にて、造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。2008年4月より、ハーバード大学にて、食事や遺伝子と病気に関する基礎研究に従事。著書に『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)。
日経トレンディネット2015年7月13日付け記事からの転載です。

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