新・遺伝子改変技術でマッチョな豚が誕生
新技術は「自然に起こる遺伝子の変異を加速しただけ」なのか?
大西睦子
32匹のクローン化されたマッチョな子豚を作ることに成功
ところがキム博士らは、新しいゲノム編集技術は、従来の遺伝子組み換え技術で懸念されるような悪影響を避けられると期待しているのです。
例えばゲノム編集は農業において、ウシなど家畜の角をなくす、アフリカ豚コレラウイルスに対する免疫があるブタにするといった適用方法が報告されています。
マッチョな豚を作るための鍵は、ベルジアン・ブルー牛のように、ミオスタチン(筋抑制因子)遺伝子の突然変異です。ベルジアン・ブルーは交配による品種改良によって人為的に、同じ品種間でも違う性質の個体同士を、あるいは突然変異で発生した品種と掛け合わせることで、両者の長所を兼ね備えた新たな品種を作りだすという古典的な方法を取ってきました。
ところがキム博士は、中国延辺大学(Yanbian University)のシー・ジュン・イエン(Xi-jun Yin)博士らと共同で、TALEN(Transcription activator-like effector nuclease:転写活性化様エフェクターヌクレアーゼ)と呼ばれるゲノム編集技術を使用して、ゲノム編集を行ったミオスタチンの遺伝子を受精卵に移植し、32匹のクローン子豚を作りました。
キム博士らのチームはまだこの結果を論文で発表していませんが、この分野の先駆者であるドイツのフリードリヒ・レフラー研究所(Friedrich Loeffler Institute)のハイナー・ニーマン(Heiner Niemann)博士は、この豚の写真をみて、マッチョな(double-muscled)な動物に典型的な体型だと述べています。