高タンパク質ダイエットって、大丈夫?
年齢により異なる動物性タンパク質の摂取リスク
大西睦子
がん化につながるインスリン様成長因子1にタンパク質が影響
研究者らは、タンパク質の摂取と死亡率との関連について「インスリン様成長因子1(insulin-like growth factor 1、IGF-1)」の影響を調べました。IGF-1は以前、牛乳の話題に登場した、細胞の成長や分裂を促進し細胞死を抑制している、私たちの健康維持や成長に非常に重要なホルモンです。一方でIGF-1を過剰に摂取すると、異常な細胞増殖を引き起こし、がん化につながると考えられています。
タンパク質の摂取量は、このIGF-1のレベル(体内で生産される量)に影響するのです。実際に、ロンゴ教授らの研究では、IGF-1が10ng/ml増えると、対象となる50~65歳の人のがんによる死亡率が9%高くなりました。
ただしIGF-1のレベルは、特に65歳以降に減っていきます。これは筋肉が緊張を失い、年齢とともに弱くなる理由の1つでもあります。よって65歳以上だと、タンパク質を多く摂取したほうが、死亡リスクが減ったのです。
低タンパク質の食生活が腫瘍の進行を遅らせる?
次に研究者らはマウス実験により、タンパク質の摂取量とIGF-1のレベル、がんの成長の関係を調査しました。
18週齢の雄のマウスを2グループ用意し、39日間連続的に同カロリーで、高タンパク質の食餌(タンパク質量は全カロリーの18%)、または低タンパク質の食餌(タンパク質量は全カロリーの4~7%)を与えました。また各グループのマウスには、実験前に悪性黒色腫の腫瘍を移植し、観察しました。
その結果、どちらのグループのマウスにも腫瘍ができましたが、低タンパク質の食餌グループの腫瘍の大きさは、高タンパク質の食餌グループに比べて平均78%も小さくなりました。高タンパク質の食餌グループは、IGF-1のレベルが増加していました。また低タンパク質の食餌グループは、高タンパク質の食餌グループに比べ、IGF-1のレベルが35%低くなりました。
この結果は、乳がんの細胞を移植した場合にも同様でした。
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