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医学博士 大西睦子 食・医療・健康のナゾ

結局、何を食べればいいの!? 高まる「食への不安」

「米国人のための食生活ガイドライン」改訂の波紋

 大西睦子

【問題点 1】加工肉、糖入り飲料の摂取制限が消えた!

 加工肉は塩分や飽和脂肪酸が含まれるのに、新しいDGAsでは、ヘルシーな食生活に含めてもよいといいます。これに対してフー教授は、慢性疾患の予防のために、赤身肉と加工肉の消費を減らすという検討委員会の報告と矛盾していると指摘します。

 またフー教授は、糖入り飲料の摂取を減らすという推奨事項が、ヘルシーな飲み物を選びましょう、という推奨事項に弱められていることも指摘しています。

【問題点 2】食の環境問題に触れていない

 植物由来の食事は、動物由来(特に赤身肉)の食事に比べて、身体の健康だけでなく環境への影響が少ないことが分かっています。ところが、今回のDGAsに、そのような環境問題は特に触れられていません。

■参考文献
Harvard T.H. Chan School of Public Health「Assessing the new U.S. dietary guidelines

 ということで、新しいDGAsの発表は混乱を招いているわけです。

 食生活の欧米化に伴い、日本でも肥満や生活習慣病が増加しており、DGAsは日本人にとっても他人事ではないものになってきています。とはいえ新しいDGAsの解釈には注意が必要です。次の2020年のDGAsは、政治的意図、食品産業のロビー活動の影響がなくなることを期待しましょう。

 さて、もう一つの米国民の不安は、食の安全についてです。

食の安全はどうなる!?

 2015年12月18日、米国農務省トマス・ヴィルサック長官は、「牛肉や豚肉製品の原産国表示制度を撤廃する」という声明を発表しました。

 これまでは米国でも日本のように、食肉の原産地の表示が義務付けられていましたが、今後、米国では食肉の生まれ育った国や、処理された場所が分からなくなるのです。

 そもそも発端は、カナダやメキシコが、米国の原産国表示制度が肉の輸入の差別となり、世界貿易機関(World Trade Organization:WTO)のルールに違反すると主張したことにあります。WTOは、自由貿易の促進を目的として貿易に関するさまざまな国際ルールを定める機関である世界貿易機関です。そのWTOが、食肉原産国表示制度は貿易の不公平になると主張し、表示を廃止しない場合、カナダとメキシコが米国の肉製品に10億ドル以上の報酬関税を課することを許可したのです。

■参考文献
World Trade Organization「United States - Certain Country of Origin Labelling (COOL) Requirements

 多くの米国人は米国産の食品を好み、その安全性を信頼してきました。それだけにこのニュースは、米国内での食の安全性への不安を高めています。

大西睦子(おおにし むつこ)
医学博士
大西睦子(おおにし むつこ) 東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科にて、造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。2008年4月より、ハーバード大学にて、食事や遺伝子と病気に関する基礎研究に従事。著書に『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)。
日経トレンディネット2016年2月1日付け記事からの転載です。

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