脳を鍛えれば食欲は抑えられる!?
ジャンクフードよりヘルシー食を好むようにする秘訣とは?
大西睦子
食、医療など“健康”にまつわる情報は日々更新され、あふれています。この連載では、現在米国ボストン在住の大西睦子氏が、ハーバード大学における食事や遺伝子と病気に関する基礎研究の経験、論文や米国での状況などを交えながら、健康や医療に関するさまざまな疑問や話題を、グローバルな視点で解説していきます。
今回は“脳内報酬系”と肥満について解説します。
食は人生の大きな喜びの1つとはいえ、食べ過ぎが気になる方も多いでしょう。
どうして食べ過ぎるの?
私たちがおいしいものを口にすると、ドーパミンなどの神経伝達物質が分泌され、満足感が得られます。その結果、「もっと食べたい」と思うようになります。
なぜ「もっと」と思うのでしょうか。これには食べ物から体にエネルギーを取り込む際の調節に重要な役割を果たしている神経系、「脳内報酬系」が関係しています。脳内報酬系は「快楽中枢」とも呼ばれ、自分へのご褒美を与える神経系なのです。
実は、コカインなど覚醒剤による薬物依存症も、ドーパミンという快感をもたらす神経伝達物質に関係しています。薬物を投与するとドーパミンが分泌され、快感や満足感が得られます。このドーパミンが枯渇すると、同じ快楽を得るためにまた薬物が欲しくなります。こうして薬物に対する依存症となるのです。
食べ物についても同様で、「もっと食べたい」という欲求が強くなりすぎると、食べ物に対する喜びがコントロールできなくなり、習慣化、依存、そして中毒となってしまいます。
逆に言うと、脳内報酬系を上手に働かせれば、健康的に食欲をコントロールできるわけですね。食欲に関する興味深い論文が2つ報告されていますので見ていきましょう。
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