“5:2ダイエット=ゆる断食”って効果あるの?
忘れてはならない基本は“バランスの良い食事”
大西睦子
カロリー摂取量が同じで、食べる時間、空腹の間隔が違ったら?
米カルフォルニア州ソーク研究所(The Salk Institute for Biological Studies)のサッチダナンダ・パンダ教授と、カリフォルニア大学サンディエゴ校(University of California, San Diego)、州立サンディエゴ大学(San Diego State University)の研究者らは、カロリーの摂取量が同じだった場合、毎日の食事の時間と空腹の間隔の違いが、どのように健康に影響するかを検証。2015年3月13日の科学雑誌「サイエンス」誌に報告しました。
研究者らは生物学の多様な分野で用いられる「キイロショウジョウバエ」をモデルに実験しました。キイロショウジョウバエの平均寿命は約60日です。
実験は2週齢のキイロショウジョウバエに、トウモロコシ粉のエサを下記の2グループに分類して与え、体重、睡眠と心臓の機能への影響を観察しました。
■時間自由の食餌グループ:1日中いつでも、好きな時間にエサを食べられる
■時間制限の食餌グループ:1日12時間のみエサが食べられる
結果は次のようになりました。
[1]時間自由の食餌グループは体重が増加
1日の摂取量は、どちらのグループも同じでしたが、時間自由の食餌グループは、夜間にもいくらかエサを食べました。
5週齢、7週齢の時点での体重は、時間制限の食餌グループは変化がありませんでしたが、時間自由の食餌グループは増加しました。
[2]時間自由の食餌グループは睡眠が不規則に
5週齢におけるハエの飛ぶ能力を調べたところ、時間制限の食餌グループは少し改善していました。
1日の総活動量は、両グループで同じでしたが、時間制限の食餌グループは日中より活動的でした。また、時間制限の食餌グループは、日中の居眠りが少なく、夜間に寝ていましたが、時間自由の食餌グループは睡眠時間が全体的に少なく、日中に寝る時間が増えました。
[3]時間自由の食餌グループは心機能が老化した
研究者らは心機能も詳細に調べました。
3週齢では両グループのハエに心機能の差はありませんでした。ところが5週齢になると、時間自由の食餌グループのハエは、老化に伴う特徴的な心臓の変化が認められるようになりました。つまり若い時期に時間制限食を与えると、心臓の老化が予防できるということです。
[4]時間自由の食餌グループも食餌法を変えれば心機能が改善する
研究者らは、若年で時間制限の食餌法を実践した場合と、晩年に時間制限の食餌法を実践した場合の、心臓の老化への影響を調べました。
5週齢まで時間自由だった食餌グループは、その後、時間制限の食餌法に切り替え、5週齢まで時間制限をしていた食餌グループは、その後、時間自由の食餌法に切り替えました。すると、どちらのグループも心機能はいくらか改善していました。つまり、不規則な生活を送っていても、時間制限の食餌法を始めれば、心臓の老化の予防に効果があることが示されました。
[5]鍵となる遺伝子
さらに、研究者らは時間制限の食餌による遺伝子の変化を、RNA(DNAとともに遺伝やタンパク質合成を支配するリボ核酸)を用いて解析しました。
その結果、タンパク質を折り畳むシャペロニンTCP-1リング複合体(TCP-1 ring complex chaperonin)、ミトコンドリアにおける電子伝達系の複合体(mitochondrial electron transport chain complexes:mETC)、そして体内時計に関連する遺伝子という、3つの遺伝的経路に関与していることが特定されました。
また、TCP-1と体内時計に関連する遺伝子が、変異のために機能しないハエの場合、時間制限の食餌法による健康上の利点は認められませんでした。逆に、mETC遺伝子の変異のあるハエの場合、心臓の老化に対する保護作用が増加しました。つまりこれらの遺伝子が、食事制限による遺伝子の変化に重要な役割を果たしているということでもあると示されたのです。
ただし、州立サンディエゴ大学のニュースに対し、共著者のメルカニ博士は、これらの3つの経路が同時に働いているのかどうか、またどのように働いているのか、まだ全く不明と述べており、今後の解明が期待されます。
SDSU NewsCenter「You Are When You Eat」