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医学博士 大西睦子 食・医療・健康のナゾ

デジタル端末、子どもの発育・教育に良い悪い?

米国小児科学会の最新ガイドライン

 大西睦子

【3】6歳以上の子どももデジタルメディアの使用を制限する

 ガイドラインでは6歳以上の子どもたちは、時間および場所、使用するメディア(端末)に関して制限を設け、十分な睡眠や身体活動、健康に欠かせないその他の活動の妨げにならないようにと示されています。

 メディアを娯楽道具として使用するとしても、優先順位をつけ、制限を設けるようにすべきであり、チャシアコス教授によれば「健全な子どもの成長には学校で過ごす時間や宿題をする時間、少なくとも1時間の身体活動の時間、そして社会的な関わりを持つ時間と、8~12時間の睡眠時間が必要になります。健康面での活動、特に睡眠や社会的相互作用、身体活動を削ってまでデジタルメディアを利用すべきではないのです」

 最近ではデジタルメディアを取り巻く環境も変わってきており、対話や通信、創作活動などで活用されるという多くのポジディブな側面を持つようになっています。ただしリスク(ネットいじめ、SNSやメールを使い性的な画像やメッセージをやり取りするセクスティング、広告、インターネット上での子どもの性的搾取)についても、親から子どもにしっかり伝えなければなりません。例えば、子どもとテレビ広告について議論することは重要なのです。甘いシリアルやファストフードなどの多くの食品は子ども用に販売されていますが、こうした食品が必ずしも健康的な選択ではないことを親が説明することで子どもも理解できるのと同じです。

 つまり、一番重要なのは、親が子どものデジタルメディアの使用について良き指導者であること。大人が健康的にデジタルメディアを利用する習慣を持つことも大切です。

デジタルメディアを使ってはいけない部屋を作る

 近所の高校の学内新聞に、生徒の印象深い記事が掲載されていました。「子どもがインターネットにアクセスすると、別世界にアクセスし得ます。すばらしい世界にアクセスできると同時に、恐ろしい世界にもアクセスできるのです。私たちみんなが知っておくべきことは、2つの世界の違いを見極めることは容易でないということです」

 米国では、子どもによる危険ドラッグの使用が問題になっています。スマートフォンの入手は、オンラインでのドラッグ検索・入手手段にも容易にアクセスできるようになることを意味するわけです。

 米国小児科学会では夕食や運転時など、家族一緒に「メディアフリー(デジタルメディアを使わない)」の時間を過ごすことも推奨しています。特に家族が対面して会話できる夕食時はスマートフォンをオフにするべきで、子どもの発達のために非常に重要だとしています。寝室など、自宅に「メディアフリー」の場所を設定してもよいでしょう。その部屋にはデジタルメディアを持ち込めなくするのです。これはきっと子どもだけではなく、親にとっても良い効果があるはずです。

 冒頭のニューヨークタイムズ紙で、『スティーブ・ジョブズ』の著者、ウォルター・アイザックソン氏は、「毎晩、ジョブズ氏は、大きな長いテーブルで、子どもたちと本や歴史などさまざまなことを議論しました。誰もiPadやコンピュータを持ち出しません。子どもたちはデバイスにハマっていないようでした」と述べています。

 昨今はインターネットの乱用によるメンタルヘルスの問題が、世界的に指摘されるようになっており、ニューヨークタイムズ紙によれば、中国ではインターネット依存症が臨床的障害として位置づけられているといいます。2004年には北京の郊外に10代の若者のための「インターネット依存症治療センター」が設立されたそうです。

■参考文献
The New York Times「‘China’s Web Junkies’

 テクノロジーは使い方次第で子どもの発育や教育にとって良くも悪くも影響します。当たり前かもしれませんが、大人が良い指導者であることが重要なのです。今後は、デジタル端末をうまく活用して、世界の距離感だけではなく、家族や仲間との距離感がさらに縮まることを期待します。

大西睦子(おおにし むつこ)
医学博士
大西睦子(おおにし むつこ) 東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科にて、造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。2008年4月より、ハーバード大学にて、食事や遺伝子と病気に関する基礎研究に従事。著書に『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)。
日経トレンディネット2016年11月14日付け記事からの転載です。

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