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医学博士 大西睦子 食・医療・健康のナゾ

デジタル端末、子どもの発育・教育に良い悪い?

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 大西睦子

二人のニーナの人生

 もう一つ、ワシントンポスト紙の興味深い記事をご紹介します。ワシントンD.C.周辺に住む、小学校6年生になる二人のニーナの話です。

 一人目のニーナはフリントヒル・スクールという、アップル社がデバイスの取り入れ方のモデル校として称賛するハイテクな学校に通っています。生徒がデジタル端末漬けになることで学ぶことの喜びをより感じるようになり、それが大学の進学やキャリアのより良い準備になると、教師たちは信じています。シャンナン・シュスター学部長は、「デジタル端末は酸素のようなもの。私たちの周囲のどこにでもありますし、子どもたちは早く使い始めたほうがいい」といいます。

 この学校ではプリスクールの子どもたちはiPadを、小学校5年生になるとMacBook Airをそれぞれ持っており、教室にはタッチスクリーンのホワイトボードやタブレットが用意され、誰でもWi-Fiに接続できるようになっています。この記事の記者が教室をのぞいたときには、生徒は各自のMacBook AirでGoogleやウィキペディア、YouTubeを利用して物理の課題に取り組んでいました。ニーナはというと、課題の結果を140字にまとめてツイートしていました。

 さて、フリントヒル・スクールから車で20分離れたワシントン・ウォルドルフ・スクールには、同じ年のもう一人のニーナがいます。ここはフリントヒル・スクールとはまるで別世界です。木で作られた教室にはコンピュータはありません。教室にある唯一の道具は紫の糸で結ばれたスプーンやフォーク。生徒たちはそれらを用いて楽器を作っています。こちらのニーナは、課題の結果を手書きでノートにまとめるのです。

 同スクールのナタリー・アダムス教員部長は「デジタル端末に触れるにはふさわしい時期があります。急ぐ必要はないんです。まずすべきなのは、実世界に触れること」といいます。例えば校内菜園や木工ショップなどでの実体験を通して、子どもたちがより健全な教育が受けられると考えているのです。一方で文字データやウィキペディアによる即効性の高い満足感が、対面のコミュニケーションや思考能力を脅かすのではないかと懸念しています。だからこそ同スクールでは生徒が携帯電話やノートパソコン、タブレットを使用することを禁止し、論文など提出書類は高校生になるまで手書きと定めています。

どちらのニーナも「成功への道」は歩んでいる

 フリントヒル・スクールとワシントン・ウォルドルフ・スクール、どちらもワシントンD.C.の教育レベルの高い地域にある私立高校です。二人のニーナのような恵まれた家庭環境にあれば、教育方針によってどちらの学校でも選べるのです。

 実はハイテクとローテク、どちらの教育が優れているかについての研究成果は相反する結果が示されています。二人のニーナの親たちは、それぞれの信念で学校を選びました。どちらの学校でも生徒たちの多くがスタンフォード、イエールなどエリート大学に進学します。学校の実績だけ見れば、どちらのニーナも成功への道を歩んでいると言えるわけです。でも、その後の二人のニーナの人生がどうなるのかは、まだ結果が出ているとはいえません。だからこそ、ハイテクとローテク、どちらの教育が優れているのか、論争になりやすいのです。

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