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医学博士 大西睦子のそれって本当? 食・医療・健康のナゾ

医食同源? 遺伝子組み換えの“医薬品”と“食品”は何が違うのか

遺伝子組み換え作物の普及が農薬の使用を増やす悪循環の懸念も

 大西睦子

 遺伝子組み換えによる害虫抵抗性作物や除草剤耐性作物は、世代を経て、害虫や雑草のほうが耐性を持つようになり、結果として農薬などの使用が増加する可能性があります。さらに環境や生態系への悪影響が懸念されます。これに対して、遺伝子組み換え医療品は、研究室内で精製されるので、環境への影響を心配することはありません。

 安全性や副作用に対しては、医療品は多くの場合、短期間に使用されるのに対して、食品は毎日摂取します。また、医薬品は、病気の治療に使われるので、望ましくない副作用は許容されます。さらに、多くのヨーロッパ人は、食品業界より、医薬品の安全規制や試験を信頼し、商品化以降も、医療品はより密接に監視されることを感じています。つまり、医療品に対しては、医師など専門家の意見を求めるものですよね。ところが食品については、食品メーカーやスーパーマーケットの意見よりも、自分の経験を信頼する傾向にあるのです。

 また、食品は、自然や純度の高いものを期待しますが、医療品はその効果に期待します。さらに、遺伝子組み換え食品により、食糧難による飢餓が解消されると期待されましたが、実際はこうした食品は欧米市場に集中して流通しています。

消費者には「知る権利」、そして「選ぶ権利」がある

 このように、同じ技術を用いた食品と医療品ですが、さまざまな違いがあるようです。最終的に研究者らは、遺伝子組み換え食品を摂取するかしないかは、個人が決定するべきであり、そのためにも「表示」が重要と主張しています。

 米国では、「表示」がないため、遺伝子組み換え食品が急速に普及しました。そして今になって、表示の義務化をめぐって大論争が過熱しています。私も、遺伝子組み換え食品の長期的な安全性が不明であっても、少なくとも消費者には「知る権利」、そして「選ぶ権利」があると思います。

大西睦子(おおにし むつこ)
医学博士
大西睦子(おおにし むつこ) 東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科にて、造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。2008年4月より、ハーバード大学にて、食事や遺伝子と病気に関する基礎研究に従事。著書に『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)。
日経トレンディネット2014年8月1日付け記事からの転載です。

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