健康にはいいけど汚染が心配!? 魚は食べるべきか避けるべきか
大型魚に偏った食生活には要注意
大西睦子
世界的な大問題になっているメチル水銀
ご存じの通り日本では、メチル水銀化合物の水環境汚染のため、食物連鎖によって引き起こされた「水俣病」を経験しています。工場排水として排出されたメチル水銀化合物が川や海を汚染し、メチル水銀を多量に蓄積した魚介類をたくさん摂取した人々やその子どもたちは体をむしばまれ、命を落としたり重篤な障害に苦しんできました。
ところが今やメチル水銀による環境汚染問題は、世界中で大問題となっています。米ハワイ大学、ミシガン大学の研究者らが先日『Nature Geoscience』に報告したところによると、北太平洋の深海に棲息する魚の水銀濃度の上昇が明らかとなり、原因として、中国やインドの石炭火力発電所から排出される水銀の関与が示唆されています。
Nature Geoscience「Methylmercury production below the mixed layer in the North Pacific Ocean」
米国民健康栄養調査のデータによると、米国では胎児の7.8-15%が過剰な水銀にさらされていることが判明し、妊娠中の魚の摂取に対する注意が促されています。
American Pregnancy Association「Mercury Levels In Fish」
妊婦さんは魚の選択は慎重に
日本では、厚生労働省の規制の対象は、妊婦が注意しなければならない魚種は、メチル水銀の濃度が高い可能性があるマグロ類(マグロ、カジキなど)、サメ類、深海魚類、鯨類(歯鯨、イルカ)で、それ以外の魚類を控える必要はなく、むしろ積極的に魚介類は食べたほうが健康に良いと考えられています。
厚生労働省「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しについて」
魚の汚染物質に対する見解は、専門家によっても、意見が分かれるようですが、ここまでの研究成果をまとめると、妊婦さんは魚の選択は慎重にすべきですね。また、一般の成人は、いろいろな種類の魚を摂取することが、ポイントだと思います。例えば、お寿司はさまざまな種類の魚介類を食べることができるのでお薦めですが、毎日マグロ丼ばかり食べるのは控えるべきでしょう。
医学博士
