健康にはいいけど汚染が心配!? 魚は食べるべきか避けるべきか
大型魚に偏った食生活には要注意
大西睦子
魚食のリスク…残留性有機汚染物質(POPs)とは?
確かに魚についても、果物や野菜、卵、肉類と同じように、非常にさまざまな化学物質汚染が懸念されています。特に今、最も懸念される汚染物質は、残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants;POPs、ポップス)、そして水銀です。
POPsは、次のような性質を持った化学物質の総称です。
[1]環境中で分解されにくく(難分解性)、地球上で長距離運ばれうる
[2]食物連鎖により生体内、特に脂肪に多く蓄積しやすい(高蓄積性)
[3]人の健康や生態系に対し有害性がある(毒性または生態毒性)
代表例として、しばしばゴミの焼却灰から検出されて問題になっているダイオキシン類や、電化製品の絶縁にかつて多用されたPCB(ポリ塩化ビフェニール)、以前は安価で効果の高い除草剤および殺虫剤として広く使われたDDTに代表される有機塩素系(organochlorine;OC)農薬などが挙げられます。
1990年代後半までに環境や人体への影響が世界的に問題となり、2001年、スウェーデンのストックホルムで、PCBなど12の物質の削減や廃絶等に向けた「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)」が採択されました。日本は2002年8月にこの条約を締結し、現在ではPOPsの製造および使用は禁止されています。
ところが、POPsは意図せず生成されることがあるほか、自然に分解されづらく環境中に長く留まるため、放置された廃棄物から漏出し、人知れず長距離移動して広がっている可能性もあります。また海外では、いまだにPOPsを使用している国があります。
環境省「POPs(Persistent Organic Pollutants)」
魚は避けるべきではない?
では魚食によるリスクはどの程度あるのでしょうか?
ハーバード公衆衛生大学院のモツァファーリアン教授らは、米国環境保護庁などのデータを検討し、10万人が週2回、70年間養殖サーモンを食べ続けた場合の死亡リスクへの影響を計算しました。
その結果、ポリ塩化ビフェニール摂取のために24人ががんで死亡する可能性がある一方、少なくとも7000人は心臓病による死亡リスクが下がることが分かりました。また、魚類中のポリ塩化ビフェニールおよびダイオキシンのレベルは、肉、乳製品、および卵のダイオキシンレベルと同様、非常に低く、米国人が食品から摂取するポリ塩化ビフェニールおよびダイオキシン類の90%以上は、肉、乳製品、野菜、そのほか魚以外の食品から摂取されていることを指摘しました。
以上から教授らは、ポリ塩化ビフェニールおよびダイオキシン類を気にして魚を避けるべきではないと指導しています。ただし、唯一の例外は、知人や家族が地元の川や湖等で釣った淡水魚を食べる場合には、魚ごとに摂取許容量について地元当局の勧告を考慮すべきでしょう。
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