発がん物質を減らすなら、黒ビールのマリネでBBQ!
肉に火を通す前の下ごしらえでの活用が有効
大西睦子
フェレイラ博士らは、これまでに、ビール、赤ワイン、白ワインや、それらにニンニク、生姜、タイム、ローズマリー、赤唐辛子を加えて調理された肉が、ヘテロサイクリックアミンのレベルを下げることを報告されていますが、PAHに与える影響は調査されていませんでした。
US National Library of Medicine National Institutes of Health「Effect of beer/red wine marinades on the formation of heterocyclic aromatic amines in pan-fried beef.」
the National Cancer Institute「Inhibitory effect of antioxidant-rich marinades on the formation of heterocyclic aromatic amines in pan-fried beef.
そこで博士らは、3種類のビールに漬けて下ごしらえした、あぶり焼きの豚肉と、比較対照のためビール不使用であぶり焼きした豚肉について、8種類のPAHの形成を調べました。またマリネする(漬け汁にひたす)前後での、ビールによる抗酸化能の影響も評価しました。この研究について、見ていきましょう。
なおEU食品科学委員会によると、食品中のPAH発生およびPAHの発がん作用に最も適した指標は、8種類のPAH(PAH8)の合計です。
その1:使用したビール
[1]ピルスナービール(日本で一般的な淡黄金色のビール)
[2]ノンアルコールピルスナービール
[3]黒ビール
その2:肉のサンプルとマリネの条件
研究者らは、豚のロイン(腰部分)ステーキ肉を、地元のスーパーマーケットで入手しました。肉の厚さは1枚0.75cmで重量100g。合計32枚をPAH測定のために使用しました。
マリネの時間は、5℃で4時間、肉とマリネの量の割合は1:1(g/ml)です。ビール以外の材料は追加しません。
炭火焼きで調理する前に、豚肉はマリネから取り出し、やや乾燥させました。4時間というマリネの時間は、以前の研究報告(HCAを減らすためにビールに漬けて下準備した牛焼肉に関する研究)を参考にしました。
その3:調理条件
木炭を用意し、庭用グリル(幅34cm、長さ52cm、高さ15cm)に点火し、すべての炎が収まったときに、マリネにした豚肉サンプルを熱源から15cmの距離で、炭火焼きしました。グリル温度は200~230℃、内部温度は最低限75℃です。
豚肉は、グリル中に1度裏返し、加熱時間は合計10分です。木炭は、肉の種類ごとに交換しました。
調理後、豚肉サンプルを凍結乾燥させました。そして、抗酸化能の分析も行われました。
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