日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様
日経Gooday TOP  > 医療・予防  > 医学博士 大西睦子のそれって本当? 食・医療・健康のナゾ  > “愛のホルモン”投与で痩せるって本当!?  > 3ページ目
印刷

医学博士 大西睦子のそれって本当? 食・医療・健康のナゾ

“愛のホルモン”投与で痩せるって本当!?

浮気を抑制する忠実な愛のホルモンの役割も

 大西睦子

実験1:妻がいる男性ほど、オキシトシンで他の女性との距離が離れる

 57人の異性愛者の成人男性(平均年齢25歳)を被験者とし、オキシトシンの鼻スプレー投与群とプラセボ群に分けました。57人のうち27人は独身男性で、30人は安定した一夫一妻のパートナーを持つ男性でした。オキシトシンの効果を図るため、実験には魅力的な女性が参加します。

 対象者はスプレー投与45分後に、まず、魅力的な女性から60cmの距離に立ちます。その後、女性に近づいたり離れたりします。研究者はその間、被験者にとっての、女性との理想的な距離感を調査します。

 結果、オキシトシンの鼻スプレーを投与したパートナーを持つ男性被験者は、投与しなかった男性や独身男性に比べて、魅力的な女性との理想的な距離を、より遠くに保ちました(被験者は平均68~79cmが理想的距離、投与しなかった男性や独身男性は平均54~61cmが理想的距離)。女性の代わりに男性を立たせた場合、距離を遠く保つような結果は出ませんでした。

 なお、オキシトシンはアイコンタクトがあると、分泌が増えることが分かっています。しかし、魅力的な女性がアイコンタクトを続けても視線をそらしても、どの群も理想的な距離は変わりませんでした。

実験2:妻のいる男性だけが、女性の写真をなかなか見ようとしない

 29人の異性愛者の成人男性(平均年齢25歳)を被験者とし、オキシトシンの鼻スプレー投与群(14人)とプラセボ群(15人)に分けました。被験者には性的に魅力的な女性の写真を見せます。被験者はその写真にズームインして、より近づくことができます。

 結果、オキシトシンは一夫一妻のパートナーを持つ男性だけを刺激し、明らかに反応が鈍くなり、写真に近づく速度が遅くなったのです。これは独身男性には見られませんでした。

 過去の研究で、オキシトシンが、草原ハカタネズミの一夫一妻のカップルをつくる鍵となるホルモンであることが報告されています。今回の研究で、オキシトシンは人間においても、男性が他の女性に関心を抱くことを妨げ、一夫一婦制の忠実な関係を促す役割があることが示唆されました。

“オキシトシン=浮気しない”ではないけれど

 以上の実験から、オキシトシンは“忠実な愛のホルモン”だと分かりました。といっても、オキシトシンによって、パートナーを持つ男性が魅力のある女性から逃げていったわけではなく、独身男性より15cm後方を好んだだけですし、この実験で、浮気の誘惑までは測定されていません。さらにオキシトシンの長期的な効果も分かりません。

 とはいえこれまでの研究成果から、オキシトシンの作用で、家族、恋人やペットなどに対する愛情を深め、ストレスが減り、カロリー摂取が抑えられることが確認されています。そう考えると、非常に魅力的なホルモンですよね。

 今後は、“忠実な愛のホルモンによるダイエット”のさらなる研究成果が期待されますね。

大西睦子(おおにし むつこ)
医学博士
大西睦子(おおにし むつこ) 東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科にて、造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。2008年4月より、ハーバード大学にて、食事や遺伝子と病気に関する基礎研究に従事。著書に『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)。
日経トレンディネット2015年3月20日付け記事からの転載です。

先頭へ

前へ

3/3 page

RELATED ARTICLES関連する記事

医療・予防カテゴリの記事

カテゴリ記事をもっと見る

FEATURES of THEMEテーマ別特集

  • 健康長寿の生命線! 放置は禁物 「腎臓」の異常値NEW

    生命維持に欠かせないさまざまな機能を担っている腎臓は、よほど悪くならない限り悲鳴を上げない「沈黙の臓器」でもある。本記事では、大切な腎機能が失われる前に、異常値にどう対処すればいいか、腎臓を守るためにはどのような生活習慣に気を付けていけばいいかについて解説する。

  • 加齢で進む胃の不調 機能性ディスペプシアと逆流性食道炎の原因と対策

    加齢により胃の機能が衰えると、さまざまな不調が起きる。ピロリ菌の除菌が進んで胃がんや胃潰瘍が減ってきた今、胃の病気の主役は、胃もたれや胃痛の症状を招く「機能性ディスペプシア」と、胸やけやげっぷが起きる「逆流性食道炎」の2つに移行しつつある。なぜ機能性ディスペプシアと逆流性食道炎は起きるのか、どのような治療が必要なのか、セルフケアで改善・予防できるのか。このテーマ別特集では、胃の不調の原因と、それを解消するための対策を一挙紹介していく。

  • 「中途覚醒が多く寝た気がしない」 中高年の睡眠の悩み解消術

    「睡眠の途中で何度も目を覚まし、眠った気がしない」「早朝に目覚めてしまい、その後なかなか寝付けない」――。歳をとるにつれ、そんな「中途覚醒」「早朝覚醒」に悩まされるようになったという人も多いだろう。なぜ中途覚醒は起きるのか。中途覚醒を解消して、若い頃のような「熟睡」を手に入れることはできるのか。このテーマ別特集では、中途覚醒の原因と、それを解消するための対策を一挙紹介していく。

テーマ別特集をもっと見る

スポーツ・エクササイズSPORTS

記事一覧をもっと見る

ダイエット・食生活DIETARY HABITS

記事一覧をもっと見る

からだケアBODY CARE

記事一覧をもっと見る

医療・予防MEDICAL CARE

記事一覧をもっと見る

「日経Goodayマイドクター会員(有料)」に会員登録すると...

  • 1オリジナルの鍵つき記事鍵つき記事がすべて読める!
  • 2医療専門家に電話相談できる!(24時間365日)
  • 3信頼できる名医の受診をサポート!※連続して180日以上ご利用の方限定

お知らせINFORMATION

日経Gooday新型コロナ特設

SNS

日経グッデイをフォローして、
最新情報をチェック!

RSS

人気記事ランキングRANKING

  • 現在
  • 週間
  • 月間

NIKKEICopyright © 2021 Nikkei Inc. All rights reserved.