“愛のホルモン”投与で痩せるって本当!?
浮気を抑制する忠実な愛のホルモンの役割も
大西睦子
食、医療など“健康”にまつわる情報は日々更新され、あふれています。この連載では、現在米国ボストン在住の大西睦子氏が、ハーバード大学における食事や遺伝子と病気に関する基礎研究の経験、論文や米国での状況などを交えながら、健康や医療に関するさまざまな疑問や話題を、グローバルな視点で解説していきます。
「恋をするとキレイになる」「恋愛で痩せる」という主旨の記事は、女性向けの雑誌ではよく取り上げられていますが、恋愛をすると「食欲がなくなる」ので痩せるのは、どうやらホルモンのシワザのようです。研究報告を見ていきます。

恋をしたら食欲がなくなった…という経験はありませんか?
米国では今、“愛のホルモン”と呼ばれる「オキシトシン」の鼻スプレーが、カロリー摂取量を減らし、新しい減量方法になる可能性があるという研究が、大変話題になっています。これは2015年3月、ハーバード大学医学部の研究者らが、米国サンディエゴで開催された米国内分泌学会(The Endocrine Society)で報告したものです。
米国内分泌学会は1916年に創立された、世界で最も歴史がある、ホルモンや内分泌学の研究や医療診療の発展をリードする学会です。
オキシトシン鼻スプレー投与で食物の摂取量が減った
この研究に参加したのは、健康な男性25人で、うち13人は正常体重、12人は肥満(ボディ・マス指数=BMIが30以上)か過体重(BMIが25~29.9)で、平均年齢は27歳です。
まず参加者を年齢や体型などに関係なくランダムに分け、半分の人に朝食の1時間前にオキシトシン鼻スプレーを投与、残りの半分の人にプラセボ(効能のないダミー薬)を投与しました。その後、参加者は別の日に、前回と反対の投与を受けました。2回ともどちらを投与されたか、参加者は知らされません。
結果、プラセボ投与時と比べ、オキシトシン鼻スプレー投与時は、食事全体で平均122kcal、脂肪分では平均9g、摂取量が減っていることが分かりました。いずれの場合も重篤な副作用は認められませんでした。
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- 抱きしめられるとオキシトシンが上昇する