摂食障害や身体的コンプレックスは家族そろっての食事で減る
経済力の差により家族での食事の頻度が異なる
大西睦子
食、医療など“健康”にまつわる情報は日々更新され、あふれています。この連載では、現在米国ボストン在住の大西睦子氏が、ハーバード大学における食事や遺伝子と病気に関する基礎研究の経験、論文や米国での状況などを交えながら、健康や医療に関するさまざまな疑問や話題を、グローバルな視点で解説していきます。
昨今、注目される“食育”とはなんでしょうか。内閣府は「生きる上での基本であって、知育・徳育・体育の基礎となるものであり、さまざまな経験を通じて『食』に関する知識と『食』を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てること」としています。今回はその食育の一環である“家族との食事”が子どもや若者に与える影響について、解説します。

家族と一緒にごはんを食べながらコミュニケーションをとることは、“食育”の原点と考えられ、日本だけでなく海外でも重視されています。
そこで今回は、カナダのオタワ大学小児科の、メガン・ハリソン教授らによる報告を参考に、家族そろっての食事が、子どもや若者にもたらす心理社会的(psychosocial)効果について考えてみましょう。
the College of Family Physicians of Canada「Systematic review of the effects of family meal frequency on psychosocial outcomes in youth」
ハリソン教授らは、これまでに報告された論文を解析しました。調査したのは家族との食事の頻度が子どもや若者の心理社会的に与える影響と、その影響の男女差です。
まず教授らは、オンラインデータベースの「MEDLINE」(米国立医学図書館、NLM〈National Library of Medicine〉が提供する医薬関連文献の索引・抄録2次資料データベース)を用いて1948年~2011年までの医学文献の検索を行いました。同様に会員13万人の世界最大の心理学者の団体である米心理学会(American Psychological Association:APA)の1806年~2011年までの報告を調べました。
検索キーワードは「家族」「食物摂取」「栄養」「ダイエット」「体重」「思春期の態度」「摂食行動」および「摂食障害」と、これらの単語の組み合わせです。
最初の検索で見つかった論文は1783本。さらに以下の基準を満たす論文を絞り込んでいきました。
[2]対象に子どもや若者を含む
[3]子どもや若者の心理社会的転機(例えば、薬物使用、摂食障害、うつ病)における家族との食事の役割を議論
[4]データ分析に適切な統計を用いている
最終的に条件を満たした論文は14本で、その内容を解析すると次のようになりました。
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