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医学博士 大西睦子のそれって本当? 食・医療・健康のナゾ

スマホの使いすぎで肩、肘、指、目、睡眠に異変?

近視にも老眼にも悪影響

 大西睦子

症状その4「睡眠不足から肥満、がん」:眠れない

 紫外線を慢性的に浴びすぎるとシミやシワ、皮膚がんや白内障のリスクが高まることは、よく知られていますよね。紫外線が強い日はサングラスや日焼け止めを利用することが多いでしょう。

 では「ブルーライト(青色光)」はどうでしょうか?

 太陽の光は、人間の目に見える可視光線(波長およそ400~800ナノメートル)と、見えない紫外線(波長およそ400ナノメートルより短い)や赤外線(波長およそ800ナノメートルより長い)があります。ブルーライトは、380~500ナノメートルの波長で、可視光線では紫外線にもっとも近い、強いエネルギーを持つ光の一つです。

 ブルーライトと聞くと人工的な光を思い浮かべがちですが、自然の光の中にも存在します。例えば空の青い色はブルーライトによるものです。このブルーライトが、日中の覚醒、認知力や記憶力の向上、気分の高揚や自然の睡眠リズムに役立っています。

 一方、スマホやコンピューターのデジタルスクリーンなど、人工の光にも含まれており、長時間こうした人工のブルーライトを浴び続けると、目や体に悪影響があると懸念されています。特に夜間に人工のブルーライトを浴びると、メラトニンという睡眠を促すホルモンの分泌に影響し、睡眠障害をきたすことが懸念されています。

 メラトニンは朝日を浴びると分泌が抑えられ、その後約14~16時間後に分泌されるホルモンで、脈拍や体温、血圧などを低下させ、体に睡眠の準備ができたことを認識させて自然な眠りに導きます。朝7時に起きると夜の21~23時ごろに眠くなるのはこのメラトニンの作用によります。

 あらゆる種類の光にメラトニンの分泌を抑える効果がありますが、ブルーライトの威力は特に強力です。ハーバード大学の研究者らは、ブルーライトと同程度の明るさのグリーンライト(緑色光)を、それぞれ6.5時間浴びたときの影響を比較しました。するとブルーライトはグリーンライトの約2倍メラトニンの分泌を抑制。グリーンライトを浴びた場合、概日リズム(いわゆる体内時計)が1.5時間ずれましたが、ブルーライトを浴びた場合はその2倍の3時間、体内時計がずれてしまったのです。

■参考文献
Harvard Health Publications「Blue light has a dark side

 さまざまな研究から睡眠不足が肥満、がん(乳がん、前立腺がん、大腸がん)、糖尿病、心臓病などの病気のリスクになると指摘されています。また睡眠不足は短期記憶、学習能力の低下を招き、ネガティブな感情を増幅させたり、自尊心や幸福感、活力の低下や不安、抑うつを強めるともいわれます。

 厚生労働省によると、日本人成人の約21%、つまり5人に1人が不眠に悩んでいるとの調査結果もあるほど。さらに恐ろしいことに、子どものうち4~5人に1人が睡眠習慣の乱れや睡眠障害など何らかの睡眠問題を抱えているといいます。

■参考文献
厚生労働省「睡眠障害
厚生労働省「子どもの睡眠

 子どもが真似しないようにするためにも、就寝前に、明るいスクリーンを見るのは避けるべきといえるでしょう

 新しいテクノロジーが登場すると、生活の向上に大きな期待を抱く方が多いと思いますが、その恩恵に浸りすぎて過剰に利用し、健康を害しては逆に生活に支障をきたすだけ。息抜きも忘れずに、健康に注意して利用しましょう。

大西睦子(おおにし むつこ)
医学博士
大西睦子(おおにし むつこ) 東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科にて、造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。2008年4月より、ハーバード大学にて、食事や遺伝子と病気に関する基礎研究に従事。著書に『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)。
日経トレンディネット2016年9月27日付け記事からの転載です。

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