日経グッデイ

医学博士 大西睦子のそれって本当? 食・医療・健康のナゾ

朝食を抜くと減量できる or できない?

結局1日何回食べればいいの?

 大西睦子

食、医療など“健康”にまつわる情報は日々更新され、あふれています。この連載では、現在米国ボストン在住の大西睦子氏が、ハーバード大学における食事や遺伝子と病気に関する基礎研究の経験、論文や米国での状況などを交えながら、健康や医療に関するさまざまな疑問や話題を、グローバルな視点で解説していきます。
ダイエットに関する話題が尽きることはありませんが、最近では「1日何食、食べるといいのか」ということに、注目が集まっているようです。

食の回数を増やすダイエット法が数多く出回っている。(©nitr/123RF.com)

 1日1食より1日3食、1日3食より1日6食、1日6食より……などと、「1日×食のほうがダイエットに有効」という話題を耳にすることが増えてきたように思います。実際に『1日6食ダイエット 100kcalレシピ集』(浜内 千波[著]/マガジンハウス/2009年)、『お肉もケーキも食べて大丈夫! 伊達式1日5食ダイエット』(伊達 友美[著]/宝島社/2011年)をはじめ、1日何食にするかをうたうダイエット関連本も数多く出ています。

 結局、私たちは1日何回食べればいいのでしょうか?

1日17回の軽食で心臓病や糖尿病のリスクも減る?

 医学界で最も権威のある雑誌の1つである「ニューイングランド・ジャーナル・ オブ・メディシン(The New England Journal of Medicine:NEJM)」に、1989年に報告された、食事の回数に関する古典的な研究があります。

■参考文献
U.S. National Library of Medicine「Nibbling versus gorging: metabolic advantages of increased meal frequency.

 研究者らは、1日に何度も少しずつ食べるか、それとも一気にお腹いっぱい食べるか、どちらが代謝に有利になるかを調査しました。

 具体的な調査方法は、
  ・研究に参加したのは成人男性7人
  ・1日17回の軽食と、1日3食の食事を、それぞれ2週間ずつ、ランダムの順番に摂取する
 というものでした。

 その結果、1日17回の軽食をとった場合のほうが、総カロリーを減らさなくても、コレステロールとインスリンの値が下がり、体重増加のリスクだけではなく、心臓病や糖尿病などの病気のリスクが減らせるという結果が出ました。

 ところがこの報告以降、食事の回数と体重の関係について、多くの疫学調査(集団を対象とした病気に関する調査研究)が報告されており、関係がある、関係はない、逆の関係(食事の回数を増やすと体重が増加する)など、バラバラな結果が出続けました。

食事の回数を増やしても、減量には有効ではない

 そんな状況が続いた1997年、フランスの研究者たちは、それまでに報告された研究成果を再評価しました。そして結局、体重を調整しているのは、食事の回数ではなく、食事の摂取量、つまり総カロリーと判断したのです。

■参考文献
U.S. National Library of Medicine「Meal frequency and energy balance.

 さらに、2010年にカナダの研究者らは、同じカロリー制限の条件のもとで、食事の回数を増やせば、体重が減るかどうかを調査しました。

 調査方法は
  ・対象者は16人の肥満の成人
  ・8週間同じカロリーで、食事回数の多いグループ=1日3食+3スナック、食事回数の少ないグループ=1日3食のみに分けて経過観察
  というものでした。

 8週後、どちらのグループも平均4.8%体重が減りましたが、食事の回数による差はありませんでした。結局、摂取するカロリーが同じなら、食事の回数を増やしても、減量には有効ではないことが分かったわけです。

朝食を抜くと減量できた!

 それでは、1日3回がベストなのでしょうか?

 朝食は必須なのでしょうか?

 2013年、米国コーネル大学の研究者らは、毎日の体重管理のためには朝食が不可欠、という通説にどこまで信ぴょう性があるかを確認しました。

 研究者らは、朝食を食べる習慣がある人と朝食を食べない人を、研究の参加者として募集しました。そして参加者が、朝食の時間以降、どのくらい食べるかを観察しました。朝食をとらない人は、朝食をとる人よりも空腹になりましたが、昼食またはその他の時間に、より多く食べることはありませんでした。

 さらに1日のトータルで見ると、朝食を食べない人の摂取カロリーは、平均408kcalも少ない量でした。つまり、朝食を抜くと、かえって減量できるという結果だったのです。

■参考文献
U.S. National Library of Medicine「Effect of skipping breakfast on subsequent energy intake.

カロリーは、食事の全体量の目安として用いる程度

 それでは、朝食は抜いた方がいいのでしょうか? 結局、1日何回食べればいいのでしょうか?

 ここまでの研究の結果から考えると、限定できる回数はないと思います。性別、年齢、身体活動や仕事、病気などによっても、1日に必要なカロリーはまったく違いますし、ライフスタイルによっても、食事のタイミングは変わってきますよね。ですから、それぞれ個人が、カロリーと体重をコントロールする自分に合った方法を見つけるべきだと思います。

 もっと重要な点は、カロリーは食事の全体量の目安として用いる程度にしておいて、栄養素、内容と質に注意するべきことです。また、適度な運動は欠かせません。ダイエットの長期的な目標は、健康的な食生活を楽しみ、生活習慣病などのリスクを減らして、イキイキと人生を送ることですから。

大西睦子(おおにし・むつこ)
医学博士
大西睦子(おおにし・むつこ) 東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科にて、造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。2008年4月より、ハーバード大学にて、食事や遺伝子と病気に関する基礎研究に従事。著書に『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)。
日経トレンディネット2014年6月20日付け記事からの転載です。