日経グッデイ

スゴイカラダ

運動不足の筋肉は“霜降り化”する?

筋肉と脂肪細胞のどちらにでもなれるサテライト細胞

 北村 昌陽=科学・医療ジャーナリスト

ダイエットしようと思っている人は、ぜひ、筋肉をしっかりと動かしてください。筋肉は、動かさないと中に脂肪がたまり、〝霜降り〟状態になるそうです。でも動かせば、動かした分だけどんどん元気になるのです。

(イラスト:江田ななえ)

 スリムなボディーになるには、筋肉を鍛えたほうがいい。これはもうダイエットの常識だろう。でも、わかってはいるけど実際はなかなか…。

 などと躊躇している方に、ぜひこのお話をお伝えしたい。日々しっかり動いている筋肉はキリリと締まった姿をキープするが、動かずになまけていると、脂肪にまみれた〝霜降り〟状態になってしまうという。

 「筋肉は、動いているのが正常な姿。これを動かさずにいるのは、遊びたがる子どもを小さな部屋に閉じこめるようなもの。異常が起きるのも当然ですよ」

 豊橋創造大学大学院教授で、筋肉の生理学を研究する後藤勝正さんはこう話す。霜降り化した筋肉は代謝も下がるから、全身にも脂肪がたまりやすくなる。いいことは一つもないのだ。

筋肉にも、霜降りにもなる「サテライト細胞」の不思議な能力

 筋肉の内部には、「筋線維」と呼ばれる細長い細胞が、びっしりと束になっている。直径は0.1mmほどだが、長さは20cmを超えるものもある。普通、人間の細胞は数十マイクロメートル程度のサイズなので、そうとう巨大な細胞といえる。

 細胞の中には、「筋原線維」というたんぱく質の糸が規則的に配列されている。これが筋肉のパワーの源。筋線維は、この収縮装置を収納する目的に特化した“器”といえる。

 筋線維には、サイズ以外にもう一つ、際立った特徴がある。通常の細胞なら一つしか持っていない「核」を、数十個も持っているのだ。

 「筋線維は、人間がまだお母さんのお腹の中にいるときに作られます」と後藤さん。

 「胎児の体ができていく過程で、筋芽細胞という細胞が融合して、細長い線維状の細胞になるのです。このときできた線維が、一生使われます」。ただ、細胞は融合するけれど、核はバラバラのまま残るのだという。

 へー、細胞が寄り集まって長い線維ができるのか。その名残は大人の体にも残っていて、筋線維の周りには筋芽細胞の末裔が5~10個ぐらいあるそうだ。「サテライト細胞」と呼ばれるこれらの細胞が、筋肉の運命を握るキーファクターだ。

 トレーニングなどで筋肉を鍛えると、刺激を受けた筋線維は、もっと強い力を出せるようになろうとする。「するとサテライト細胞が筋線維と融合します。それで筋線維が太くなり、パワーアップするのです」。

図1◎ これが1個の細胞? 巨大サイズの中に無数の核が散らばる
[画像のクリックで拡大表示]

 一方、なまけている筋肉では筋線維が徐々に細くなり、核の数も減る。と同時に、サテライト細胞に驚くべき変化が起こる。なんと脂肪細胞になってしまうのだ。

 「サテライト細胞は、筋肉と脂肪細胞のどちらにでもなれるのです。ただ、脂肪になるほうのスイッチは通常、抑えられている。でも、筋肉をほとんど動かさないと、そちらのスイッチがオンになってしまうのです」

 こうなると、筋肉の内部に、脂肪細胞が点々と生まれることになる。見事にサシの入った“霜降り筋肉”の出来上がりだ。う~む、牛じゃあるまいし、なんということか…。

霜降りは解消できる! 筋肉を動かすのが決め手

 ただ、いいニュースもある。後藤さんによると、通常、サテライト細胞は増殖する能力がとても高いので、たとえ筋肉が一度霜降り化しても、再生は十分に可能なのだという。

 「運動不足の筋線維は細くなっていますが、消えてなくなることはない。動かしさえすれば、サテライト細胞が融合して太くなる作用が再び始まります」

図2◎ 休眠状態のサテライト細胞を活性化させると筋肉になる
[画像のクリックで拡大表示]

 なるほど。つまり筋肉の運命は、自分次第でどうにでも変化するということか。決めるのはあなた。さて、どっちの道を選びますか?

(出典:『スゴイカラダ』日経BP社 2014年4月発行)


北村 昌陽(きたむら まさひ)
科学・医療ジャーナリスト
北村 昌陽(きたむら まさひ) 1963年北海道生まれ。91年京都大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学。専攻は生物物理学。92年日経BP社入社。日経メディカル編集部を経て、2000年より日経ヘルス副編集長に就任。ダイエット、エクササイズ、メンタルヘルスなどの特集や連載を担当。2009年退社。現在、医療・健康ジャーナリストとして活躍している。著書に『カラダの声をきく健康学』(岩波書店)がある。

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