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「口がくさい!」は唾液減少が原因?

1日に1.5Lも作られる唾液は加齢やストレス、病気で減少してしまう

 北村 昌陽=科学・医療ジャーナリスト

 日常生活の中で、唾液量に大きな影響を与えるのが、食事。もう少し正確にいうと「よく噛むこと」だ。

 「食べ物をしっかり噛むのが、唾液を出す要件。食事をちゃんとしていなかったり、ろくに噛まずにのみ込んでいると、分泌量が減ります」

 するとどうなるか? 唾液には、(1)歯の再石灰化を促す(2)消化酵素で食べ物を消化する(3)抗菌作用で菌の繁殖を抑える─ という三つの大きな機能がある。唾液量が減れば、これらの作用が弱まってしまうことになる。

 この中で、自覚症状として気づきやすいのが(3)。「口の中にすみつく細菌、特に嫌気性菌と 呼ばれる菌は、口臭の原因成分を作っています。この菌が増えるとにおいが強くなるのです」。

 え、唾液が口臭と関係している?

 嫌気性とは、「酸素が嫌い」という意味。私たち人間は酸素を使って生きているので、酸素 =生命の基本と思いがちだけれど、細菌の世界には、酸素が苦手な菌も多い。そういう菌たちは、歯と歯ぐきのすき間の奥底のような、よどんで酸素がほとんど届かない所にすんでいる。

 食事をよく噛むと唾液が出てきて、口の中がすごい勢いで撹拌される。よどんでいた嫌気性菌のすみかにも、フレッシュな酸素と抗菌作用を持つ唾液が送り込まれる。すると嫌気性菌の増殖が抑えられ、口臭も出にくくなるわけだ。「日中は食べたりしゃべったりして唾液がよく出るので、嫌気性菌がおとなしい。夜間は唾液があまり出ないので、嫌気性菌が増えます。だから、朝の起き抜けは口臭が強いのです」

図2◎ 口臭予防は「噛む」こと。唾液を出せば口臭が減る
[画像のクリックで拡大表示]

 ストレスなどが原因で唾液が慢性的に減ってしまう「ドライマウス」でも、口臭は典型的な症状の一つ。お口のにおいが気になる人は、「唾液をしっかり出す」ことが大事なのだ。

 だけど、ちょっと待って。マスクやハンカチなど、唾液が染みたものってけっこうにおいますよ。唾液がにおいを抑えるというけれど、矛盾していませんか?

 「ああ、あれは、マスクの上で菌が繁殖したのです。唾液は無臭です」

 唾液は、お口の健康を保つのに不可欠な存在。大切なのです。しかもにおいません。

(出典:『スゴイカラダ』日経BP社 2014年4月発行)


北村 昌陽(きたむら まさひ)
科学・医療ジャーナリスト
北村 昌陽(きたむら まさひ) 1963年北海道生まれ。91年京都大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学。専攻は生物物理学。92年日経BP社入社。日経メディカル編集部を経て、2000年より日経ヘルス副編集長に就任。ダイエット、エクササイズ、メンタルヘルスなどの特集や連載を担当。2009年退社。現在、医療・健康ジャーナリストとして活躍している。著書に『カラダの声をきく健康学』(岩波書店)がある。

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