唾液、つば、よだれ─ いろんな呼び名があるけれど、もとは一緒。口の中に分泌される、あの液体です。〝汚いもの〟として扱われがちですが、実はお口のにおいを抑えるのに大事な働きをしています。唾液をいっぱい出すには、よく噛むこと。それが、口の中をキレイに保つ基本なのです。

人体が分泌する液体は、尿、涙、汗などいろいろとあるけれど、その中で感覚的に最も嫌われているのが、「唾液」かもしれない。「唾棄」(つばを吐き捨てるように、捨てて顧みないこと: 広辞苑)なんて言葉もあるぐらいだし。
でも、同じ液体が“よだれ”になると、「垂涎」(あるものを非常に強くほしがること:同)という表現になるわけで、これならそんなに嫌な感じはしないかも。
まあ文学的な意味はさておき、体が働くうえで、唾液は何をしているのだろう。東京歯科大学教授の角田正健さんに聞いてみよう。
よく噛むことで においの原因菌が抑えられる
「唾液が1日にどのくらい作られるか知っていますか?」と角田さんは話し始めた。答えはなんと1.5L。500mLペットボトル3本分にもなる。
この量は、1日に作られる尿の量とほぼ同じだという。もっとも、尿は体外へ排泄されるのに対して、唾液は大部分飲み込んで回収されるので、水分のロスは唾液のほうがずっと少ない。
唾液を作るのは、口の周りにある三つの唾液腺。ものを食べたりおしゃべりをすると、ここから唾液が出てくる。どこから出る唾液も中身はほぼ一緒だ。 「1.5Lという量は平均値。かなり個人差があります」。一般に若い人ほど量が多く、年を取るほど減少する。ストレスや、糖尿病のような病気の影響で減ることもある。
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- 唾液を出すにはどうしたらいい?