メタボ症候群の正体は内臓脂肪の「炎症」
脂肪細胞が一線を超えて病的に膨らむと、アディポネクチンの分泌量が、今度はがくんと減ってしまうという。すると代謝が悪くなり、処理し切れない糖分や脂肪が血液中にあふれる。アディポネクチンには血管の傷みを補修する作用もあるので、これが減ることで血管の傷みが進んで動脈硬化になる。
「これがメタボリックシンドロームの正体です」
太った脂肪細胞はさらに「悪玉ホルモン」と呼ばれる一連の成分を分泌する。すると血液が固まりやすくなり、心臓病や脳卒中のリスクが高まる。
これは一体なにごとなのか?
「脂肪組織が“炎症”を起こしているんですよ」
炎症といえば、風邪でのどが赤くはれたり、傷口が熱を持つような、あの反応のこと。体内に侵入した菌やウイルスの増殖を抑える「免疫反応」の一部だ。
太った脂肪細胞が放出する悪玉成分は、なぜか免疫の担い手であるマクロファージという細胞を呼び寄せる。マクロファージは通常、体内に侵入したバクテリアなどを食べてくれるありがたい細胞だが、悪玉成分に刺激されると、不必要な炎症を引き起こしてしまうのだ。
炎症が脂肪細胞を刺激し、さらに悪玉化させる。結果、脂肪細胞は悪玉ホルモンを一層まき散らし、血液はもっとドロドロ、炎症がさらに蔓延…という悪循環に陥る。
「この悪循環から脱するには、脂肪細胞をスリムにするしか方法がありません」。なるほど、それでメタボな人はダイエットに励む必要があるわけだ。ちなみにこういう悪循環が起きやすいのは、内臓脂肪がたまった場合。へそがグイッとせり出すように太ったら、要注意だ。
ところでダイエットの方法は大まかに「食事制限」と「運動」があるが、井澤さんによれば、同じ程度の減量でも、運動でやせるほうが炎症を抑える効果が高いという。健康的にやせるなら、食事制限だけじゃなく運動も! 覚えておきましょう。
(出典:『スゴイカラダ』日経BP社 2014年4月発行)
科学・医療ジャーナリスト

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今、私たちの身の回りは、ものすごい量の「カラダにいいこと」を伝える情報であふれています。しかし、「カラダにいいこと」をするには、その背後に「カラダを大事にする気持ち」があってこそです。カラダは、自分自身をとても大切な、価値のあるものとして扱っています。その姿勢が、内臓や神経、ホルモンなどの働きぶりとして表れています。カラダのしくみそのものが、「カラダは大事だよ」と語っているのです。どうぞ、カラダのすごさ、知恵深さをじっくりと味わってください。「へー」「すごい」「なるほどねぇ」とうなずきながら読んでいくうちに、いつの間にか「カラダは大事だよ」というカラダからのメッセージが、あなたの中にも染み込んでいくと思います。──「はじめに」より改変
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