もっとも人間の場合も、仕切りがあるのはのどまで。そこで二つのルートは合流し、1本の管(咽頭)になる。再び2本に分かれるのは10cmほど下がった地点、ちょうどのど仏の高さだ。ここから呼吸ルートは前方に枝分かれして肺に至る。後ろ側が、胃につながる食べ物ルートだ。
つまり2つのルートは、途中に咽頭という“共通区間”があって、そこで通り道が交錯している。そのため、食べたものが鼻や肺へ入らないよう、舌やのどちんこ(軟口蓋)、気道のフタ(喉頭蓋)が絶妙のタイミングで動き、2つの機能を両立させているのだという。
のどちんこが動かないと言葉を話せない
うーん、絶妙なのはわかるけれど、どうせなら「鼻から肺」と「口から胃」という2本の管が完全に別になっているほうが、何かと便利だったんじゃないでしょうか? 実際、ときどき食べ物が気道のほうに入ってむせることもあるわけだし…。
「それでは言葉を話せませんね。人間が音声を使って言葉を話せるのは、ここでルートが重なっているからです」
私たちは言葉を話すとき、肺が吐き出す空気を鼻と口に振り分けて、さまざまな音の響きを作り出しているという。例えば「パ」という音と「マ」という音を比べてみよう。発声するとき唇から息を吐き出すのは一緒だが、このときのどちんこがのどの奥にぴったりくっついて鼻に息が通らなければ「パ」、のどちんこが離れて息が鼻に抜けると「マ」になる。
「のどちんこも唇も、発音しようと思っただけで自動的に動くでしょ? これは人間だけができる、非常に繊細な能力です」
へぇ~言葉を話すときにも働いていたのか。実は大役を担っていたんだな、のどちんこ。
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