耳を澄ますと、鳥のさえずりや木々の梢が風にそよぐ音が、聞こえてきます。そんな音が聞こえるのは、耳の中に宿るしくみが、しっかり働いてくれているから。え、それが「ハゲ」と何の関係があるかって? さてそれは、読んでのお楽しみ。

耳が何をやっているのかは、もちろん皆さんご存じだろう。「音を聞く」のが仕事だ。
音は、空気を震わせて伝わる波の一種。電車のガード下に行くと、ゴーッという音とともに窓ガラスがびりびり震えるが、あれは騒音の空気振動が、ガラスを揺さぶっているわけだ。「音を聞くしくみも原理は一緒。鼓膜が、空気の振動で揺り動かされるところから始まります」
こう切り出したのは、慶應義塾大学耳鼻咽喉科の教授で、聴覚が専門の小川郁さん。
鼓膜は、耳の穴(外耳道)の奥に張られた膜。直径8~9mm、厚さ0.1mmほどの膜が太鼓の皮のようにぴんと張られている。この膜が空気の振動に共振して、音をキャッチするという。
「だから空気のない真空中では、私たちは音を聞けないのです」
なるほど。でも音うんぬんの前に生きていけない気もします…けど、それはともかく。
鼓膜が捉えた振動は、耳小骨という小さな三つの骨を介して、その奥のカタツムリに似た器官へと伝わる。「蝸牛」と呼ばれるこの装置が、聴覚の主役だ。
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- 音の高さによって揺れる“毛”が違う