日経グッデイ

中野ジェームズ修一が熱血指導! 『ぽっこりお腹解消メカニズム』

食事制限すると、お腹が凹まない!?

摂取カロリーの抑制には落とし穴が

 中野ジェームズ修一

メタボが気になる中年男性の“ぽっこりお腹”を解消すべく、卓球の 福原愛選手やテニスのクルム伊達公子選手を指導したパーソナルトレーナーの第一人者、中野ジェームズ修一氏が熱血指導する!

 お腹が出てきたり体重が増えたりしてくると、「甘いものは控えよう」「しばらく肉を食べるのはやめよう」「炭水化物を抜こう」などと、食事制限をする方は多いのではないでしょうか。

 普段食べ過ぎている方が「ラーメンの替え玉を控える」「ご飯のお代わりをやめる」などと食事の量を調節することは理にかなってますが、間違った食事制限は“お腹を凹ます”ことにつながりません。一度は体重が落ちたとしても、すぐに戻ってしまうのです。

 前回のコラム「腹筋運動でお腹は凹まない! その理由は?」で書かせていただきましたが、お腹を凹ませるためにはもちろんのこと、日々の基礎代謝量をアップして太りにくい体を作るためには「筋肉量を増やす」ことが重要になります。

 勘の良い方はここまで読んでお気づきになったかもしれませんが、間違った食事制限をすると筋肉量が減ってしまい、その結果として基礎代謝量が落ち、リバウンドしてしまうわけです。

 栄養士にこのあたりのことを聞くと、「摂取カロリーを過剰に抑えようとすればするほど筋肉量は減ってしまう」「栄養指導だけで筋肉量を減らさずに何kgも体重を落とすことは難しい」と言います。プロの栄養士が目を光らせても、摂取カロリーのコントロールだけで筋肉量を減らさずに体重を落とすことは難しいのです。

炭水化物を抜くと筋肉が分解される!?

 絶食や炭水化物抜きダイエットのように、炭水化物の摂取を極端に制限するようなことをすると、人の体にはどのようなことが起こるのでしょうか。

 人間の体脂肪には膨大な量のエネルギーが蓄えられています。心臓や肝臓、消化器などの臓器は脂肪を燃やして得られるエネルギーで動いているわけですが、脳を動かすエネルギー源であるブドウ糖だけは体脂肪から合成することができません。

 ブドウ糖は血液中のアミノ酸から合成するのですが、炭水化物を制限することで血中のアミノ酸がなくなってしまうと、人間は筋肉を分解してブドウ糖の合成の材料に使います。これを「糖新生(トウシンセイ)」といいます。

 脳のエネルギー源であるブドウ糖を作るのに必要な炭水化物を抜いてしまうとどこかのタイミングで糖新生が始まり、筋肉が分解されてしまいます。筋肉が分解されて減少すると基礎代謝量が落ちてしまうのは、もうみなさんがご存知の通りです。炭水化物を完全に抜くことで一時的に体重が減少したとしても、基礎代謝量も同時に落ちるので、リバウンドすることになるのです。

 また人間の体には、恒常性(ホメオスタシス)という体の環境を一定に保とうとする力があります。体温が常に平熱に戻ろうとすることもそのひとつなのですが、体重に関しても長年維持している体重に戻ろうとする作用があります。例えば、ずっと体重が70kgだった人がちょっと運動して68kgまで落としたとしても、体が70kgに戻ろうとするのです。

 断食で体重を減らし、元に戻るとまたそれを繰り返すという方がたまにいらっしゃいます。それ自体に意味がないとはいいませんが、体に余計な負担をかけているといえるでしょう。

 適度な運動をして筋肉量を向上させつつ、バランスの良い食生活を心がけ、有酸素運動で内臓脂肪を燃やす。内臓脂肪を燃やすことで体重が減ったら、今度はそれを維持していくことが大切です。

 体重70kgの人が68kgになり、それを最低でも4~5年程度キープすることができると、今度は68kgがその人の恒常的な体重になります。すると、70kgに一時的に増量しても、体が68kgに戻ろうとするようになるのです。

たんぱく質をしっかり摂ることも重要

タンパク質を摂取して筋肉量を低下させないことが大切(©pixelbliss/123RF.com)

 ここまでは主に炭水化物についての話をしてきましたが、たんぱく質をしっかりと摂取することも非常に重要です。

 たんぱく質は筋肉を作る材料。10代や20代のうちはたんぱく質の量が少なくても筋肉を合成できるのですが、年齢が高くなるとたんぱく質から筋肉を合成する効率が下がっていきます。

 それでも筋肉量を低下させないためには、年齢が高くなるのに比例してたんぱく質の摂取量を増やす必要があります。体重や食べすぎを気にされている方は、肉や魚などたんぱく質の多い食品を敬遠してしまいます。もちろん過剰な摂取は禁物ですが、野菜が健康的で、肉が不健康などということはなく、重要なのはバランスなのです。

 食品中のたんぱく質の品質を評価するための数値に「アミノ酸スコア」というものがあります。そのスコアが100の食品だと良質なタンパク質を効率良く摂取することができます。鳥のササミ、マグロの赤身、鶏卵、牛乳などが挙げられます。

 また、たんぱく質を筋肉に合成するにはビタミンB群が必要で、ビタミンB群をもった食品と一緒に食べるとなお良いでしょう。例えばマグロの刺し身定食と玄米、牛ヒレステーキと玄米といった組み合わせは、たんぱく質を吸収するのにとても良いコンビです。筋肉量の低下は基礎代謝量が落ちるだけでなく、高齢者になったときに要介護状態になる恐れがあります。それを避けるためにも、たんぱく質の摂取と筋力トレーニングは重要だといえるでしょう。

 「たんぱく質の摂取が重要」という話をすると、プロテインで補うのはどうかという質問をよくされます。

 1日に必要なたんぱく質は、体重1kgあたり0.8~1.2g必要だとされています(かなりハードに運動される方でも体重1kgあたり1.8~2.0g)。そのぶんが食事で摂れているのであれば、プロテインで補う必要はありません。偏った食事ではなく、バランスの良さを心がけて食事をしていると、この数字をクリアするのは難しくないのです。

 例えば、朝食にご飯とみそ汁、魚か卵料理を食べる、昼食は定食、夕食に肉とサラダを食べるという典型的な食事をすると、1回あたり約20g、1日で60gのたんぱく質を摂取できます。ご自身の体重に0.8をかけた値が60を超えていなければ、それで十分。体重70kgの方であれば56ですので、偏った食生活をしなければ、十分なたんぱく質を摂ることができるわけです。必要なたんぱく質を摂れているうえにプロテインをプラスするとカロリーオーバーになり、太る原因になってしまうので注意が必要です。

 脂肪も過剰な摂取は問題ですが、体に必要なぶんは摂る必要があります。無脂肪乳と通常の牛乳を一定期間飲んでもらい、それぞれの体重の変化を比較する実験があったのですが、結果は「どちらも変わらない」というものでした。必要な範囲で摂ることはむしろ大切で、どんな栄養素でも摂り過ぎることが問題なのです。

 もちろん、体質に合わない、アレルギーを起こしてしまう、という場合は食べるものを制限する必要がありますし、糖尿病の方は糖質をカットしなければいけない場合もあるでしょう。その場合は必ず医師に相談してください。

 しかし、最近何かと敬遠されがちな肉や乳製品、炭水化物も必要な量を摂ることはとても大切。それらを極端にカットすることはダイエットに効果がないだけでなく、健康を損なう恐れもあるのです。

(まとめ:神津文人)
中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)
フィジカルトレーナー/米国スポーツ医学会認定ヘルスフィットネススペシャリスト
中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち) 卓球の福原愛選手など日本のトップアスリートだけでなく、高齢の方の運動指導も行う「パーソナルトレーナー」として活躍。日本各地での講演も精力的に行っている。近著に「なぜいくら腹筋をしても腹が凹まないのか」(幻冬舎新書)など多数。
日経トレンディネット2014年3月18日付け記事からの転載です。