日経グッデイ

中野ジェームズ修一が熱血指導! 『ぽっこりお腹解消メカニズム』

子供がかけっこで速く走れない“根本的原因”は?

走り方を理屈で教えようとしてはイケマセン

 中野ジェームズ修一

「腹筋でお腹は凹むの?」「バランスボール、断食、サウナはダイエットに効くの?」……メタボが気になる中年男性の“ぽっこりお腹”を解消すべく、日本を代表するトップアスリートの個人指導も行う、パーソナルトレーナーの第一人者、中野ジェームズ修一氏が熱血指導する!

子供たちの50メートル走のタイムがひと昔前に比べると落ちている。(©PaylessImages-123RF)

 春の運動会シーズンの真っ盛りです。運動会前にお子さんと一緒にかけっこを練習するお父さんも多いのではないでしょうか。

 文部科学省が発表している「体力・運動能力調査」によると、子供たちの50メートル走のタイムはひと昔前に比べると落ちています。2014年に計測した7歳男子の平均は10.58秒となっていますが、統計が残っているなかで最も古いデータである1983年の7歳男子の平均は10.25秒でした。最近は少しずつタイムが上がっているのですが、昔と比べて体が大きくなっていることを考慮すると、現代の子供たちは速く走れなくなっているといえそうです。

 走ることだけに限らず、運動能力や体力が昔と比べて低下している主な原因は環境にあるとされています。携帯ゲーム機やスマートフォンなどのゲームで遊ぶ機会が増えたのは明らかですし、都市部では子供たちが駆け回って遊ぶような場所も多くありません。お父さんたちも自分が子供のころを思い出してみると、随分と変わったと感じるのではないでしょうか。サッカー、野球、テニスなどをクラブで習っているという子でなければ、体を使って遊ぶ機会が減ってしまっているのです。

 速く走れるようになりたいというのであれば、まずは外で遊ぶ機会を少しでも作るようにするといいでしょう。鬼ごっこだって、アスレチックだって構いません。体を動かすことで、子供たちは体の使い方を自然と覚えていくものなのです。

速く走るためのポイントは?
体を前に傾ける。後傾させない
「スプリットジャンプ」というエクササイズを行う
理屈よりも“ものまね”。速く走っている人の走り方をまねさせる

速く走るためのポイント(1)体を前に傾ける

 速く走れないという子供たちの走り方を見ると、体が後ろに傾いてしまっている場合があります。速く走るためには足で地面を蹴ったときの反発力を推進力に変える必要があるのですが、体が後傾していると地面を蹴っても前に進む力にはほとんどなりません。地面を蹴った反発力を効率良く推進力に変えるためには、体を少し前傾させて走る必要があるのです。

 では、どうして後傾してしまうのでしょうか。これも日常的に体を使った遊びをあまりしていないことに原因があります。小さいころから友だちや兄弟と取っ組み合いをしたり、駆け回って転んだりという経験をしていると、前に倒れたときに手を出して体を支えるという動きが自然と身につきます。逆にあまりそういう遊びをせずに大きくなると、無意識のうちに前に倒れるのが怖くなってしまい、体が後傾してしまうのです。これでは速く走るのはとても難しくなってしまいます。お子さんの走っている姿を見て後傾してしまっているようだったら、少し前傾するようにアドバイスしてあげてみてください。

 体が前に倒れそうになったときに手がしっかりと出るようにするには、布団やベッドの上で膝立ちになったお子さんの背中を軽く押してあげて、前に手をつく練習をするといいでしょう。とっさに手を前に出す感覚と、手で体を支えられる力が身につけば、前傾して走ることが怖くなくなるはずです。

 さらに、手軽にできて足が速くなることにつながるエクササイズを1つ紹介しておきましょう。「スプリットジャンプ」と呼ばれるもので、このエクササイズで、地面からの反発を推進力に変えるための感覚と筋力を養うことができます。

 前脚の膝が爪先よりも前に出ないように気をつけながら、両脚を前後に開きます。体を少し沈み込ませてから両足で地面を蹴って垂直にジャンプし、空中で脚の前後を入れ替えて着地。これを20回×2セット程度を目安にやってみてください(膝関節が90度以下になるほど曲げるとケガや障害の原因になる可能性があるので注意してください)。

速く走るためのポイント(2)理屈よりも“ものまね”

 人間の脳神経機能は、12~13歳ごろまでに90%ほどが完成されるといわれています。一方で、筋力はその時期までに50%程度しか成長しません。脳神経機能が急速に発達している小学生の間は、大人に比べると筋力トレーニングはそれほど効果的でない一方で、動作の習得にはとても適した時期です。大人になるとなかなか習得が難しい動作も、子供たちはあっという間にできるようになってしまいます。一輪車やスケートボードなどにすぐ乗れるようになるのは、子供ならではといえるでしょう。

 そして、子供は動きを理屈で覚えるのではなく、体で習得しているところにポイントがあります。子供のころは有名なスポーツ選手の動きをまねして遊ぶものです。少し前ならイチロー選手の振り子打法を、今なら錦織圭選手の“エア・ケイ”と呼ばれるショットをまねている子がたくさんいるのではないでしょうか。動きをまねるというのはとてもいいことで、うまい人の真似をすることで、子供の運動能力は向上していきます。

 話を走ることに戻しますが、この“まねをする”ことは足が速くなるための近道でもあるのです。腕の振り方や脚の運び方を理屈で教えるよりも、速く走っている人の走り方に興味を持たせ、まねさせるほうが速く走れるようになるのです。

 お子さんが小学校低学年であれば、上級生や近くの中学校の陸上部の生徒などの、速くカッコよく走っている姿を見せて、「なんであのお兄ちゃんは速いんだろうね?」「なんでカッコよく見えるんだろうね?」などと声をかけて好奇心を刺激してあげると、自然とまねをするようになるかもしれません。走ることに限らず、何かのスポーツを見せてそれをまねさせると、体の使い方がうまくなるので、ぜひさまざまなスポーツをお子さんに見せてあげてください。

(まとめ:神津文人)

中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん
フィジカルトレーナー/米国スポーツ医学会認定ヘルスフィットネススペシャリスト
中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん 卓球の福原愛選手など日本のトップアスリートだけでなく、高齢の方の運動指導も行う「パーソナルトレーナー」として活躍。日本各地での講演も精力的に行っている。近著に「なぜいくら腹筋をしても腹が凹まないのか」(幻冬舎新書)など多数。
日経トレンディネット2015年11月16日付け記事からの転載です。