東京マラソンの人気などを背景に、ランニング人口は2080万人に増加し、各種スポーツの中でも高い関心を集めています。特に20~40代の男性の参加が多い一方で、アスリートのような走りを性急に求めすぎた結果、故障をしてしまう人も少なくありません。そんな状況に危機感を抱くのは、五輪マラソンメダリストの有森裕子さん。トップアスリートならではの深いランニング知識を基に、楽しく長く走り続けるためのコツをお届けします。
この連載でも度々お伝えしていた「第1回おかやまマラソン」が、去る2015年11月8日に開催され、1万3000人以上のランナー参加の下、大成功のうちに閉会しました。
初開催に向けて主催者の皆さんと共に準備を始めたのは、実に4年前。岡山出身者として、そして元ランナーとして、コース設定などのお手伝いをさせていただきました。そして、本番当日は、2007年の引退レース以来となるフルマラソンに私も参加しました。
当初、5時間半で完走できればいいかなと思っていましたが、いざスタートしてみると、途中で何度も立ち止まり、ヨロヨロになりながらも4時間46分32秒というタイムでゴール。その瞬間、自然と涙が溢れ出てきました。それは現役時代に流した涙とは全く違うものでした。
「晴れの国おかやま」の底力? スタート直前に起こった“奇跡”
大会当日の天気予報は、全国的に雨模様。岡山は以前から、「晴れの国おかやま」というぐらい晴天率の高さが有名です。それなのにマラソン初開催の大事な時に限って雨なんて…。スタッフは半ば開き直って、「晴れの国で雨に遭遇するなんて、貴重ですね!」と冗談を言い合うしかありませんでした。
ところが大会当日、朝から断続的に降り続いた小雨はスタート直前で上がり、レース中は全く降らず。そして大会が終了し、係員が備品などを撤収した後に、ザーッと本降りになるという奇跡が起こりました。さすが「晴れの国おかやま」。青天を願う心を裏切りません。
スタート時の気温は15~16度程度で、少し蒸し暑いぐらいでした。私は薄手の長袖のシャツと少し長めのハーフタイツを選び、シューズは現役時代のような薄いソールのものでなく、分厚くもない薄くもないものを履きました。目標はタイムではなく、あくまで完走。練習がほとんどできていなかったので、極力足に負担がかからず、しかし重すぎないシューズが妥当だと思いました。
何しろ8年ぶりのフルマラソンです。これまで仕事で5~10kmなどの短い距離の大会に参加し、ジョギングペースでゆっくり走ることはありましたが、日常生活では結局、ほとんど練習することができませんでした。「練習しなければ!」と思いつつ、日々の忙しさに追われ、結局実現できたのは、エレベーターを使わず自宅のマンション内の階段を上り下りするのみ…。
仕事ではハイヒールを履きますので、家で5本指のソックスを履いて足の疲れを取り、足裏の筋肉をほぐしたり、ストレッチをしたり…。大会1週間前は、胃もたれするような油物は極力控えて、和食をメーンとしたご飯をお腹の中に入れましたが、心がけたのはこれぐらい…。この連載では読者の皆さんにフルマラソン前の準備などを散々ご紹介してきたのに、最低限の準備しかできず、お恥ずかしい限り。決してマネしないでいただきたいです(苦笑)。
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