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有森裕子の「Coolランニング」

有森裕子 マラソンシーズン真っただ中、不調を感じた時は…

情報に振り回されず、自分の体とじっくり対話しよう

 有森裕子=元マラソンランナー

自分の体を知り、“考える時間”を大切にしよう

 大事なのは、自分の体や現状を知り、「どこを鍛えようか」「どこが悪いのかな」と考える癖を身につけることです。この“考える時間”を大切にして楽しんでいる人こそ、ランニングのスキルアップにつながっているように思うのです。

 私自身も現役から退き、筋量がだいぶ落ちているので、自分の走り方が以前と違うことは分かっています。「右脚のこの部分が妙に痛いな」「この部分の筋肉が張るな」と思ったら、腕振りの際の肩の位置がベストな状態から微妙にズレていたりします。

 現役の頃から自分の体を知り尽くし、違和感がないか常に考えながら走っていたので、すぐに原因に辿りつけるのだと思います。原因が分かれば対策を練ることができます。皆さんもウォーミングアップの時に、ゆっくりと走りながら“自分の体やフォームをチェックする”ように意識してみてください。それが習慣になれば、ちょっとした体調の変化も敏感に感じ取れるようになるでしょう。

ケニア人のフォームを真似すれば速く走れる!?

 最近は、ランニング教室などが数多く開かれるようになり、ランニングのノウハウに関する情報もあふれていますから、陸上の実業団選手より市民ランナーの方の方がフォームやケアなどの意識が高いと思うこともしばしばあります。

 私が参加するランニング教室のイベントでも、初心者よりも経験者の数の方が圧倒的に多く、皆さん、陸上に関するある程度の知識を持っています。昔に比べて、ランニングフォームが相当ひどく、これは今すぐ注意しなくては!というランナーは少なくなってきて、皆さん、それなりの美しいフォームで走っています。時折、体を反らせて走る、腕振りのときに脇が大きく開く…などの癖ある方を見かけますが、それでも注意することが本当に少なくなってきました。それだけランニング文化が成熟してきたということかもしれません。

 ただ、効率重視の情報ばかりが目立って出回っているのも事実。「速くなりたい!」という思いから情報を貪欲に求める志は立派だと思いますが、一種の流行とも言えるランニング情報が、誰にでも当てはまるとは限りません。あくまでも一つの参考例と認識し、無理に真似しないでほしいのです。

アフリカ勢の走りをそのまま取り入れても速く走れるわけではありません。(©mezzotint123rf-123rf)
アフリカ勢の走りをそのまま取り入れても速く走れるわけではありません。(©mezzotint123rf-123rf)

 ちなみに、ランニング教室のイベントで最近よく出るのが、「つま先から着地した方がいいんでしょうか」という質問。世界陸上などの国際的なマラソンレースで、ケニア人をはじめとしたアフリカ勢がつま先着地で走っている姿を目にして、そうした質問に辿り着くのでしょう。

 そういう質問をされると、「いやいや、あなたはケニア人ではありませんから!」とツッコミそうになってしまいます。いくら速いからといって、筋肉の付き方も育った環境も異なる外国選手の走り方が、誰にでもあてはまる万能なフォームではないのです。

 美しく効率的なフォームばかりにとらわれて、“本当に大事な知識”が抜け落ちてしまうランナーは少なくありません。ではその“本当に大事な知識”とは、なんだと思いますか? それは、“ケガをしないためのトレーニングの知識”です。ランニングを生涯スポーツに育てるためには、美しい走り方を教えるというよりは、ケガをしないための補強トレーニングやケアの重要性を発信していくことが、私の役目かなと思っています。

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