タイムよりゴールを目指すランナーに
私自身は「ランニングが好き」というよりは、「何かに一生懸命に打ち込むこと」が昔から好きでした。極端な話、やりがいを持ってがんばることができればランニングでなくてもよかったのです。一生懸命に取り組んで自分を表現できるものがたまたまランニングであり、それを仕事に選んだにすぎません。目的は健康ではなく、世界のトップになるタイムを目指す「競技スポーツ」の世界で生きてきました。
そんな私たちの走り方や練習内容を一般ランナーたちが見て、「私にもできるかも」とまねしてけがをしてしまうのは、本意ではありません。健康な生活を送れるように長く楽しく走り続けるのが目的の一般ランナーにとって、アスリートのようなストイックさは不要です。長く続けるコツはズバリ、「無理をしない」「タイムを追わない」「厳しいノルマを課さない」というこの3つにあると思います。
気分が悪くなったり痛みが伴ったりするまで、自分を追い込む練習は必要ありません。雨の日は休んでいいのです。出張先や旅行先にもランニングシューズやウエアを持っていく人が増えましたが、荷物を増やしてまで「走り続けなければ」と思い詰める必要もありません(ただし、観光目的でゆっくり楽しみながら走るのであればリフレッシュ効果が期待できるのでいいでしょう)。
大会では、ベストタイムを出すことを追い求め過ぎず、まずはゴールすることを目指しましょう。足が痛ければすぐに棄権する。そもそも無理して大会に出場しなくても、4年に1度しかない五輪ではないのですからチャンスはいくらでも巡ってきます。
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