日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様
日経Gooday TOP  > スポーツ・エクササイズ  > 有森裕子の「Coolランニング」  > 有森裕子 これは楽しい!「オンラインマラソン」に感じた新たな可能性  > 2ページ目
印刷

有森裕子の「Coolランニング」

有森裕子 これは楽しい!「オンラインマラソン」に感じた新たな可能性

 有森裕子=元マラソンランナー

まるで一緒に走っているような不思議な感覚と臨場感

 普段、マラソン大会にゲストとして参加するときに私が楽しみにしているのは、沿道でランナーの皆さんに声援を送ったりハイタッチをしたりすることですが、1人1人のランナーにとっては、一瞬の出来事です。一方、オンラインマラソンでは、ランナーの皆さんが実際に走る姿を見ることはできず、ハイタッチもできませんが、その代わりに、1人1人のランナーの耳にダイレクトに、かつ継続的に応援の声を届けることができます。これは私にとって非常に新鮮で、刺激的な体験でした。

 参加するランナーにとっても、お互いの姿は見えないけれど、ナビゲーターを通じて人と人がつながり、みんなで一緒に走っているような不思議な感覚と臨場感が生まれます。実際にこのセッションに参加したランナーの方からは、完走後に「本当に横で一緒に走ってもらっているみたいだった」「1人で走っていても、応援してもらったおかげで元気が出ました」といった感想をいただきました。自分が参加しているレースの実況を聞きながら走るという面白さはオンライン開催ならではで、1人で走り続けるしんどさなども解消できる新しい形だと思いました。

 もちろん、多くのランナーにとっては、たくさんの人たちと一緒に走り、抜きつ抜かれつ順位を競えるリアルなマラソン大会が一番楽しいことでしょう。レースに出場すれば自分の成長度合いが明確に分かりますし、それを目標に日々のトレーニングに励んでいたという人も少なくないと思います。それでも、コロナ禍で生まれたこのゲーム感覚の新しいスタイルには、リアルとはまた違った楽しさがあり、今後さらに広がり、コロナが収束した後も残っていくのではないかなと思いました。

 オンラインマラソンにあまり興味のなかった私にとっても、まさに目から鱗が落ちるような体験で、あまりの楽しさに、瀬古さんには「ぜひこれからも続けてほしいし、また私も参加させてください!」とお願いしてしまいました。

好きな時間に、好きな場所で、何度でも参加できるイベントも

 私が理事長を務める「スペシャルオリンピックス日本」(*1)でも、大会出場やスポーツをする機会が失われた全国のアスリートの新たな目標作りや、国民の健康増進のために、われわれが何かできることはないかと模索していました。アイデアを出しながら10月1日からスタートしたのが、「スペシャルオリンピックス日本 オンラインマラソン2020」です。

 このオンラインマラソンのキーワードは、“つなぐ”。知的障がいのある人もない人も関係なく、期間中に参加者全員の走った、もしくは歩いた総距離で日本を1周し、その後は世界1周を目指すイベントです。個人部門や、仲間で参加できるチーム部門があり、いずれも「エントリーフォーム」と、自身のランニングウォッチや専用アプリなどを活用して測った走行距離を記録する「記録提出フォーム」を運営側に提出するだけで、気軽に参加できます(1日最長50kmまで)。

 イベント進行中は、今、参加者の合計で何km走り、日本、そして世界のどの地点に到達したのかがサイト上の地図に表示されるほか、個人部門とチーム部門の走行距離のランキングも掲載されてモチベーションアップにつながります。何よりもこのイベントの良いところは、いつ、どこで走ってもOKなところです。大会参加のために遠方まで出向かなくても、自分の都合のいい時間帯に好きな場所でチャレンジできますので、参加者を選びません。自分のペースでランニングやウォーキングができ、毎日参加してもいいので、運動の習慣化や運動不足の解消にもつながります。オンラインの参加証も届きますので、これを読んでくださっている皆さんもぜひご参加ください(12月10日まで開催)。お待ちしています!

 スポーツ界に限った話ではありませんが、今のコロナ禍のようなピンチに陥ったときほど、新たなサービスは生まれます。しかし、そうした新しいサービスに、障がいを持った方々や高齢の方々などは参加できないケースが少なくありません。今回の試みはそこのハードルを取り払った、好例ではないかと自負しています。

 弱い立場の人ほど、世の中で取り残されがちになることが少なくないですが、アイデア次第で、障がいがある人もない人も関係なく、人とつながりやすくなります。オンラインなら自分の状況がどうであれ参加しやすく、会えなくても気持ちや心がつながれば、「自分は決して1人ではない」と思うことができます。人を通じて自分の存在意義や価値を知ることができるとも思うので、それが生きるエネルギーにつながればいいなと思っています。

 リアルな「場」が戻ってくることが待ち遠しい一方で、誰もが気軽につながることができるこうした選択肢が、今後も増えていってほしいと願っています。

(まとめ:高島三幸=ライター)

*1 スペシャルオリンピックス日本:知的障がいのある人たちに、さまざまなスポーツトレーニングとその成果発表の場である競技会を提供する国際組織「スペシャルオリンピックス」の、日本国内での活動を推進する非営利組織。
有森裕子(ありもり ゆうこ)さん
元マラソンランナー(五輪メダリスト)
有森裕子(ありもり ゆうこ)さん

1966年岡山県生まれ。バルセロナ五輪(1992年)の女子マラソンで銀メダルを、アトランタ五輪(96年)でも銅メダルを獲得。2大会連続のメダル獲得という重圧や故障に打ち勝ち、レース後に残した「自分で自分をほめたい」という言葉は、その年の流行語大賞となった。市民マラソン「東京マラソン2007」でプロマラソンランナーを引退。2010年6月、国際オリンピック委員会(IOC)女性スポーツ賞を日本人として初めて受賞した。公式Instagramアカウントはこちら

先頭へ

前へ

2/2 page

ジョギング・ランニング
キーワード一覧へ

RELATED ARTICLES関連する記事

スポーツ・エクササイズカテゴリの記事

カテゴリ記事をもっと見る

FEATURES of THEMEテーマ別特集

  • 早期発見、早期治療で治す「大腸がん」 適切な検査の受け方は?

    日本人のがんの中で、いまや罹患率1位となっている「大腸がん」。年間5万人以上が亡くなり、死亡率も肺がんに次いで高い。だがこのがんは、早期発見すれば治りやすいという特徴も持つ。本記事では、大腸がんの特徴や、早期発見のための検査の受け方、かかるリスクを下げる日常生活の心得などをまとめていく。

  • 放置は厳禁! 「脂肪肝」解消のコツ

    人間ドック受診者の3割以上が肝機能障害を指摘されるが、肝臓は「沈黙の臓器」だけあって、数値がちょっと悪くなったくらいでは症状は現れない。「とりあえず今は大丈夫だから…」と放置している人も多いかもしれないが、甘く見てはいけない。肝機能障害の主たる原因である「脂肪肝」は、悪性のタイプでは肝臓に炎症が起こり、肝臓の細胞が破壊され、やがて肝硬変や肝がんへと進んでいく。誰もが正しく知っておくべき「脂肪肝の新常識」をまとめた。

  • 肩の痛みから高血圧まで、「姿勢の崩れ」は様々な不調の原因に

    「姿勢」が、肩こりや腰痛の原因になることを知っている人は多いだろうが、足の痛みや高血圧、誤嚥性肺炎まで、全身の様々な不調・疾患の原因になることをご存じの方は少ないかもしれない。これまでに掲載した人気記事から、姿勢と様々な病気・不調との関係について知っておきたいことをコンパクトにまとめた。

テーマ別特集をもっと見る

スポーツ・エクササイズSPORTS

記事一覧をもっと見る

ダイエット・食生活DIETARY HABITS

記事一覧をもっと見る

からだケアBODY CARE

記事一覧をもっと見る

医療・予防MEDICAL CARE

記事一覧をもっと見る

「日経Goodayマイドクター会員(有料)」に会員登録すると...

  • 1オリジナルの鍵つき記事鍵つき記事がすべて読める!
  • 2医療専門家に電話相談できる!(24時間365日)
  • 3信頼できる名医の受診をサポート!※連続して180日以上ご利用の方限定

お知らせINFORMATION

日経Gooday新型コロナ特設

SNS

日経グッデイをフォローして、
最新情報をチェック!

RSS

人気記事ランキングRANKING

  • 現在
  • 週間
  • 月間

NIKKEICopyright © 2021 Nikkei Inc. All rights reserved.