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有森裕子の「Coolランニング」

有森裕子 リオ五輪惨敗から考える、日本の女子マラソンに欠けているもの

“想定外”だらけのレースで実力を出し切るには

 有森裕子=元マラソンランナー

日本人選手の「コース取り」から見えた準備の甘さ

 本番のコースがどのように変化して、どこに給水場所があって、どのような位置取りで走れば、無駄な動きをせずに楽に進めるか。これは事前に情報を入手し、入念に検討できることです。しかし、今回のリオ五輪での福士選手は、「なぜそんな風に走るの?」と思わせるコース取りが目立ちました。アフリカ勢がペースを上げた時に日本勢がついていけなかったのは、“無駄の多い位置取り”で体力が消耗したことも一因ではないかと思ってしまうほどでした。

 コースの特徴やライバルの走り、気候、給水場所などあらゆる情報を入手し、どんなコース取りをして、どんなレース運びをするのかを徹底的に考えることは、オリンピックの舞台に立つマラソンランナーなら当たり前のことです。一般ランナーでも、そうしたことに十分気を配っていらっしゃる方もいるかもしれません。また、準備をしていたとしても、それが本番で思うようにできないというのは、普段から本番を想定したトレーニングができていなかったのではないか、常に本番のレース運びを考えながら走る、という意識付けが足りなかったのではないかと思えてなりません。

“周りが選手に合わせる”練習からの脱却を

 2つ目の敗因は、「いかなる状況の変化にも順応できる力が足りなかった」ことが考えられます。どんなスポーツでも、勝負には想定外の事態がつきものです。しっかり戦略を立てて挑みつつ、想定外の出来事が起こったときにあわてず順応できる力が大事になります。特にマラソンは、天候の変化やレース展開、急な身体の変化など、想定外のことだらけ。本番のレースは、選手に“合わせる”ことはしてくれません

 では、想定外の出来事にも順応できる力を養うにはどうすればいいのでしょうか。これは、“常に周りに合わせてもらう”のではなく、“周りの状況に自分を合わせていく”経験を積み重ねることが大事だと思います。そのためにも、日々のトレーニングにおいて、「この選手は、この練習をやらせるとつぶれてしまうから、こっちの練習をやらせよう」と監督やコーチが、選手の状態に練習メニューを合わせるようではダメ。本来は、選手が練習に合わせるべきだと思うのです。

 私も現役時代、どうすれば監督の作った練習メニューをこなせるかを必死に考えていました。コーチや監督、そして選手自身が「この厳しい練習に取り組むには、どんな風に身体の土台を作り、どういう風に体調を整えていけばいいか」を考え、準備するという“発想の転換”が大事なのではないでしょうか。

 高い意識を持って日々のトレーニングに取り組み、それを繰り返すことによって、選手の順応性は磨かれ、本番で想定外のことが起こっても勝てる力につながるはずです。これは、走りの技術云々以上に大切なことだと私は思います。

 そして、普段からそうした意識でトレーニングに取り組むためには、やはり「メダルを獲得したい」ではなく、「何が何でもメダルを獲得する!」という強い決意が必要です。厳しいことを言うようですが、今回の日本勢は、その“何が何でも”の気持ちがどこまであったのか、疑問に思います。

普段の練習から、常に本番を想定して走る“思考のクセ付け”を。(© Vasily Pindyurin-123rf)
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