ハードなトレーニングは免疫力を下げる恐れが
普段から激しいトレー二ングを積んでいるトップアスリート(競技者)は、自分は「健康体」であるという意識が大前提にあります。そもそも健康でなければ、自分を極限まで追い込むような激しいトレーニングはできません。そのため、競技レベルを上げることばかりに意識が向いてしまい、病気の早期発見や予防といった健康管理への取り組みが後回しになりがちです。定期健康診断や人間ドックは、大きな目標を達成するまで受診しない、という感覚のアスリートは多いのではないでしょうか。
ハードなトレーニングを積み、強靭な肉体を持つアスリートは、免疫力が高いイメージがありますが、実はそうとも言えないようです。適度な運動であれば免疫力は高まりますが、過激な運動をすると、上がるはずの免疫力がかえって低下し、風邪をひきやすくなるという研究結果もあります。体が受ける直接的なダメージに加え、結果を出さなければならないプレッシャーがストレスとなって自律神経を乱すなど、複合的な要因から免疫力が低下すると考えられているようです。ハードなトレーニングを積んでいるアスリートほど、自らの健康状態を過信することなく、普段から健康管理を意識する必要があるのです。
同じことが市民ランナーにも言えます。トップアスリートのような激しいトレーニングをしていなくても、仕事や家事による肉体的・心理的な疲労とトレーニングによる疲労が重なって、気づかぬうちに免疫力が下がっている可能性は十分に考えられます。そんな時に無理をすれば、体調を崩すことになりかねません。
特にフルマラソンを走った後は、注意が必要です。通常のトレーニング以上の距離を走れば、それだけ体への負荷は大きくなりますから、全身の体力が消耗し、免疫力は低下しやすくなります。
レースに出場して体調を崩し、日常生活に支障をきたしては、それこそ本末転倒です。レース後は体を冷やさないようにし、休養日(レスト)をしっかりとって、念入りなストレッチで体をほぐしながら、バランスの良い食事や睡眠をしっかりとって体調の回復に努めましょう。
「セルフチェック」と「定期健診」で自分の体を観察する
アスリートが健康を維持するには、普段から自分の体調に気を配る習慣を持つことが大事だと思います。例えば、私が実践しているのは「毎日、体重を計って記録する」習慣です。起床後、鏡で全身をチェックしてから体重を計り、その数値の変動で体調を把握しています。「なんだ、そんな簡単なことか」と思われるかもしれませんが、これがけっこう健康管理に役に立つのです。毎日測り続けると、体調のいい時の体重を知ることができます。その体重を維持しようと意識すれば、自ずと日々の生活習慣を正そうというモチベーションにつながっています。

ポイントは計測時間を一定にすること。そうでなければ、正しい判断はできません。食事後や運動後に計っても、その数値の変動は食べ物やかいた汗のせいであることが大きく、正しい体重は把握できません。
体脂肪が同時に計測できる体重計があれば、体脂肪の数値や、食事の内容、体調や気分なども日々ノートや手帳に記録しておくと、体調が崩れるときの自身のパターンが見えてきて、予防や対策につながります。
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