東京マラソンの人気などを背景に、ランニング人口は2080万人に増加し、各種スポーツの中でも高い関心を集めています。特に20~40代の男性の参加が多い一方で、アスリートのような走りを性急に求めすぎた結果、故障をしてしまう人も少なくありません。そんな状況に危機感を抱くのは、五輪マラソンメダリストの有森裕子さん。トップアスリートならではの深いランニング知識を基に、楽しく長く走り続けるためのコツをお届けします。
今年は例年に比べ梅雨明けが遅め、との予想も出ているようですね。とはいえ、本格的な夏はすぐそこまで来ています。
じめじめした空気に包まれる梅雨から、直射日光がじりじりと肌を焼きつけるような真夏へと移行する今の季節は、急激な気温や湿度の変化に体がついていけず、体調を崩しやすくなります。
現役時代、「有森は夏に強い」と言われてきましたが、私はプロですから、普段からの練習の積み重ねがその強さにつながりました。しかし、走り始めて間もない市民ランナーが真夏にガンガン走り込み、アフターケアもせずにいると疲れは溜まる一方です。やがて、だるくて仕事に集中できないなど、日常生活に支障をきたすような結果を招いてしまいます。
梅雨から猛暑、残暑にかけての時期こそ、疲労を残さないような練習内容や体調・食事管理が大切になります。今回は、秋冬の大会シーズンに体調のピークをしっかりと合わせられるよう、今の時期にお薦めのトレーニング方法をいくつかご紹介したいと思います。
秋冬のシーズンに向け、「トライアスロン」に挑戦?!
まずは「練習メニュー」。梅雨のシーズンから夏場にかけてのランニング練習は、秋や冬の大会シーズンでしっかり走るための“体づくりの期間”と考えましょう。
市民ランナーはとかく走ることだけがランニングの練習メニューだと捉えがちですが、決してそうではありません。ウエイトトレーニングや補強運動を増やして完走するために必要な筋肉をつけたり(「梅雨時こそランナーの“体づくり強化期間”」参照)、1kmほどの短めの距離をスピード上げて3本ほど走ったりするなど、暑い中でも無理しすぎずに、走力アップを図れる練習はいくらでもあります。こうした体づくりの時期が土台となって初めて、目標の大会をケガなく完走することにつながります。
また、暑い夏こそ水泳はお勧めです。炎天下をだらだらと長い距離を走るよりも、水泳でまとまった距離を泳いで全身の筋肉を鍛え、心肺機能を高めた方が、秋冬のシーズンにつながるいい練習になります。
思い切ってトライアスロンの大会に参加してみるのもいいでしょう。「ええっ、トライアスロン!!」と驚く方も多いかもしれませんが、一口にトライアスロンといっても、様々な距離の大会が開催されていることをご存じでしょうか?

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- 雨の中の練習は疲れをため込む