2002年には、アスリートのマネジメント会社「株式会社ライツ」(現在の株式会社RIGHTS.)を設立しました。この社名には、アスリートとしての権利、人としての権利を大事にしたいという思いが込められています。
私がプロになった後、マラソンの高橋尚子さんや水泳の北島康介さんなどのメダリストがプロ宣言し、現在へとつなげていただいたことを感謝しています。アスリートも、自分の価値を最大限に生かして生きていくための選択ができるようになったことが、何よりもうれしいです。
プロとして生きていくためには厳しいことが多く、成功するには結果を出すことが常に求められます。でも例えば、マラソンの川内選手は、すべての大会を本当に一生懸命に走ります。そんな他のランナーとは少し違う、唯一無二の魅力があれば、たとえ「レースに勝ち続ける」ことができなくても、生き残れるとも思います。もし走れなくなっても、後進や市民ランナーを指導したり、ランニングクラブを作るビジネスを始めたりするのも、走ることを生業にしたプロの仕事です。
2020年の東京五輪にはプロとして挑む選手もいるでしょう。五輪が終わった後に、今後の自分の道を選ぶ選手も多いかと思います。プロの道を選ぶ選手は覚悟を持って、厳しさも楽しむぐらいの気持ちで進んでほしいと思います。もちろん、プロになる、ならないは個人の選択であって、どちらが正しいというものではありません。プロであってもなくても、自分らしい生き方を模索しながら、自分の道は自分で選んで責任を持って歩んでいくアスリートがこの先も増えていくことを期待しています。
(まとめ:高島三幸=ライター)
元マラソンランナー(五輪メダリスト)

1966年岡山県生まれ。バルセロナ五輪(1992年)の女子マラソンで銀メダルを、アトランタ五輪(96年)でも銅メダルを獲得。2大会連続のメダル獲得という重圧や故障に打ち勝ち、レース後に残した「自分で自分をほめたい」という言葉は、その年の流行語大賞となった。市民マラソン「東京マラソン2007」でプロマラソンランナーを引退。2010年6月、国際オリンピック委員会(IOC)女性スポーツ賞を日本人として初めて受賞した。公式Instagramアカウントはこちら。