東京マラソンの人気などを背景に、ランニング人口は2080万人に増加し、各種スポーツの中でも高い関心を集めています。特に20~40代の男性の参加が多い一方で、アスリートのような走りを性急に求めすぎた結果、故障をしてしまう人も少なくありません。そんな状況に危機感を抱くのは、五輪マラソンメダリストの有森裕子さん。トップアスリートならではの深いランニング知識を基に、楽しく長く走り続けるためのコツをお届けします。
新緑の気持ちのいい季節は、自然に走りたくなるものですが、梅雨の時期になると一転して、ランナーのモチベーションが下がり気味になります。せっかく3日坊主を脱して、ランニング習慣が根づきはじめても、梅雨という“ハードル”を飛び越えられず、そのままフェードアウトしてしまう人も少なくありません。
とはいえ、市民ランナーの皆さんはプロではありませんから、「雨天だってレースはある! その予行練習だ!」と自分を鼓舞してまでウインドブレーカーを身にまとい、雨の中を走らなくてもいいと私は思います。ストイックに走りすぎて体調を崩し、仕事や日常生活に支障を来すようでは、本来の目的である“健康ランニング”から逸脱してしまいます。

雨の中を走るよりは補強運動で体づくりを
では、梅雨の時期はどのようなトレーニングをすればいいでしょうか。例えば、屋根がある陸上競技場の雨天走路や、商店街のアーケードの下など、近所に雨に濡れずに走れるような、安全で恵まれた場所があるならベストですが、なかなかそう都合よくいきません。
スポーツクラブのトレッドミルを走るという手もありますが、流れるローラーの上と地面を走るのでは、走りの感覚が異なるので、個人的にはあまりお勧めしません。それなら、エアロバイクを1時間ほどこいだ方が、心拍数や持久力を高める練習として効果的だと思います。
そこで私からの提案ですが、梅雨の時期は“走るための体づくりの期間”と気持ちを切り替えてみたらいかがでしょう。ここでいう「体づくり」とは、腹筋や背筋といった体全体の“補強運動”を指します。
- 次ページ
- 走っていれば、必要な筋肉が自然につく?
